気まぐれ女王様2
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血なまぐさい校舎の廊下に、ただ2人だけが立っていた。一人は神崎エリ。たった今闇の試練の敵との戦いを終えたばかりで、所々負傷している上に、右手は折れてしまっている。もう一人は、ファントム・ドーターと呼ばれる彼女の…超能力者全体の宿敵だ。こちらは今現れたばかりで、傷一つ負ってはいない。その女性は、ニタリと凶悪に笑う。被っているヘルメットのせいで顔は見えないが。
「神崎エリちゃん……聞いていた通り、綺麗ね!」
「それは、どうもありがとう。ああ、お願いがあるんだ。リオって呼んでくれるかな?」
ファントム・ドーターは、エリと同じ、レベル7の超能力者。それもエリが持ち得ない催眠能力を最も得意とする。状況も、能力も、不利な条件が整いすぎた。エリはあと1分足らずでこの校舎を脱出しなければ、闇の試練が不合格になってしまう。憤りから、唇をかみ締めた時だった。
『神崎様。その女性は闇の試練の試練相手には含まれておりません。よって残り時間内で外へ出る事で試練は終了とみなされます』
「どこへ行くのリオちゃん。行かないわよね!?私と遊んでくれるわよね!」
「悪いけど……君に構っている暇はないんだ」
言い終わるやいなや、エリは一目散に窓へ向かった。今から出口に向かうなら、ドーターを倒さなくてはならない。無茶だ。腕を前にクロスさせ、エリは窓を突き破り3階から飛び降りた。
「「「「「リオ(さん)!!!!」」」」」
「チェルベッロ。これで試練は終わりだよね?」
「「はい」」
チェルベッロの答えを聞いて、エリは校舎へと再び走り出した。ドーターを、止める為だ。逃げ出したエリのせいで、ドーターが怒って被害が増えるのは避けたい。エリはスクアーロを振り返った。
「スクアーロ!」
「う"ぉ"おい!どこへ行くつもりだぁ!校舎は爆発すんぞぉ!!」
「敵がまだいる。僕の敵だから手を出さないでね」
「……勝算は?」
「…さぁね」
そしてエリは、右手は折れて使えない為、左腕を使ってネックレスを乱暴に引きちぎる。それをスクアーロの方へと投げた。
「持ってて!」
「あ"…リオ!!」
スクアーロの呼び止める声も虚しく、エリの姿は校舎に入って間もなく見えなくなった。
先ほどと同じ場所に、未だドーターはいた。
「フフ…戻ってきてくれると思ってたわ。リオちゃんって、私達超能力者に甘いんでしょう?きっと遊んでくれると思ったの」
「そう。なら、遊ぼうか」
超能力者戦が今、始まった。