気まぐれ女王様2
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晴の守護者戦の次の日の昼、ようやく起床したエリは早速ルッスーリアの眠る部屋へと向かっていた。彼の容態を確認する為である。軽傷でもないので発熱がぶりかえしているかもしれないからだ。きっと大人しく寝ているだろうから大丈夫だろうと思っていたのだが、このクセの多い面子の中でそうはいかないらしい。
「入るよ、ルッスー……って何して!?」
珍しくも少し大きな声を出したエリ。当たり前だ。絶対安静の患者が部屋でトレーニングしてれば。
「り、リハビリよ…!」
「もう黙って寝ててそうじゃなきゃ殺すよ」
物騒な事を口にしながら、ルッスーリアをベッドに戻し、くどくどと彼に説教をするエリ。
「一刻も早く回復したいならルッスーリア、君は大人しく寝ていろって何度言わせれば気が済むの?こうなるのが嫌だったから昨晩僕は何度も注意したじゃあないか。大体、医者の言う事は聞くものってわかってるだろ?筋トレなんてもってのほか!身体が完全に回復してからに決まってるだろう?これで君の全快はまた数日伸びた訳で…」
「わかった!わかったから!」
「わかってないだろう!?」
煩い事この上ない。数十分して、この言い合いはやっと収まったが、やはりエリの言うことは正しい。一般人なら数ヶ月はかかるような重症なのに、むりやり身体を動かしてしまっては、回復が遅れるのも無理はない。せっかくの彼女の治療も台無しである。
「…今日は誰の戦いなのかしらん?」
「雷だよ」
「…そう。あたなにも言える事だけど、油断しちゃあ駄目よ」
「わかってるさ。彼らの成長速度は知ってる。だから、
それ以上の力で捻じ伏せるだけさ」
エリは笑う。一切の迷いもなく。ただ自分の力を信じて、過信でない自覚を持つ者の瞳で。
「―――――リオって、ホントに変な子ねぇ」
「けなしてる?」
「褒めてるつもりよ?普段は何をしてても気のかわりが早いのに、こういう時は真っ直ぐなんだもの
掴み所がないの」
「それが僕が僕たる所以だからね。でも、いざって時に僕が揺らいだら、僕に付いてくる者はどうなる?
――――それだけの事さ。だから僕は迷わない」
その周りを惹きつける、安心させるようなその瞳を見るのが、ルッスーリアは好きだった。
「…前々から思っていたんだけれど、リオは、人の上に立つのに向いていると思うわ」
「そうかい?中々どうして苦手なんだけれどね」
「どうしてかしら?」
「自由に動きにくいからさ」
「リオらしい答えねぇ」
ふふ、と2人で顔を見合わせて笑った。