気まぐれ女王様2

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昔話をするといったものの、血の匂いが気に触ったのかエリの部屋にはシャワーの音だけが響いている。ソファで待つように言われたスクアーロはその間にエリについて、シャワーを浴びながらもエリはスクアーロについて思案していた。


そういえば自分は、リオの事を何も知らないと今更ながらに思ったのだ。リオの性格は少なからず理解しているつもりだ。ここにいる連中の中では最も自分が多くの時間を共有している自覚もある。伊達に長い間一緒にいた訳ではない。表面上では愛想を振りまくが腹の中ではまとわり付く人間を鬱陶しがり、しかし正義感も無いわけではない。冷静沈着に見えるが、しっかり感情の起伏はある。一緒にいた間に色んな表情も見れた。要は警戒心が強いのだ。それでも優しさだって人一倍の、筈。……………意地が悪いのも否めないが。そんな彼女の矛盾に惚れたといっても過言じゃない。彼女はヴァリアーの面々なら近づいても欝陶しがらない筈。そしてこうやって夜中に部屋に入れるなんて信頼はされてるのだと思う。思いたい。



こびりついた血の匂いをシャンプーの匂いがかき消してゆく。こびりついた見えない血はもう拭う事など不可能であろうが、任務後に匂う強烈な匂いはそのまま放置はできない。この血を知れば、彼は、スクアーロはどう思うのだろうか。スクアーロもきっと数多くの人の命を奪ってきているのであろうが、きっと自分にはかなわない。もはや生まれから違うのだ。幾度となく思った。何故、”同じ”ではないのだろうか。

「”同じ”人間なのに、ね」

何度も、何度も。ただきっと、これは自分の願望なのかもしれないが、全てを知った所でスクアーロは自分を拒絶などしない。ここ数ヶ月一緒にいたからその辺りは予測もつく。彼は何も聞かなかったから、きっと甘えていたのだ。何かを隠す自分を知りながらも、知らない振りをし続けてくれた彼に。もしかすると、その優しさに京介を重ねて見ていたのかもしれない。そうならばこれ程スクアーロに失礼なことはないだろう。そしてこれから話す事で、全てを打ち明けないのも自分の甘え。未だに拒絶を怖いと思う自分に嘲笑すらもれる。本当の力を、本当のあたしを知ったスクアーロが、未だに怖くて堪らないのだ。何を話すかまとまったところで丁度良く体も洗い終えた。いつものようにネグリジェで出れば彼が卒倒すだろう様子が容易に想像できて笑えた。






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