短編・小ネタ

□穏やかに過ぎる午後2時半
1ページ/2ページ


彼女が任務から帰って来ている、と鍛錬終わりに自分の隊の部下から聞いて、スクアーロはシャワーを済ませると足早に彼女の部屋へと向かった。部屋の中の気配が全く動く様子がなかったので、ノックもせず音もなく扉を開ければ彼女はベッドの上で気持ちよさそうに寝息を立てていた。



「ったく、風邪ひくぞぉ」



分かり切っていたことだが改めて彼女はスクアーロの気配や声では、起こそうとしない限りは起きないらしい。幹部の者でも気配では起きないようになってしまったと彼女は言う。特別、だと言われている気がしてスクアーロはそれを嬉しく思っていた。恋人としてこの上ない賛辞だろう。現にスクアーロが彼女の身体を抱き上げてちゃんとベッドの中へ入れても小さく身じろぎしただけで覚醒する事はなかった。



「寝てんならまた後にするかぁ…」



特に用事があった訳ではなく、他愛ない話でもしようと部屋に訪れただけだったので、頭を掻きながら呟けば、ベッドサイドの少し大きめのテーブルにあるものが目に留まった。



「アルバム…?」



これを見ていて寝てしまったのか。まあ見てしまっても問題はないだろう、と許可も取らずスクアーロはベッドの端に腰かけてアルバムをめくる。ちなみに表紙には今は日本にいる彼女の大切な仲間の名前が書かれていた。という事は彼女のものではない。しかし、昔から一緒に居ただけあって彼女の写真も多くあった。



「クク…昔から、すげぇ負けず嫌いだったんだなぁ」



肩を震わせながらスクアーロが見る写真は、小学生くらいの彼女が瞳いっぱいに涙を溜めて、それでもこぼすまいと必死に唇を噛みしめている姿だ。その他にも美味しそうにアイスを食べている写真や、中学生くらいの彼女が海で元の世界の仲間だろう者たちと遊んでいる写真、モデル顔負けの、妖艶に微笑んでいるような最近のものと思われる写真まであった。中でも、とびきりの笑顔だったのは、白髪の学生服を着た男に抱きついている写真だった。





次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ