短編・小ネタ

□絶チル(長編主の弟子)×マギ
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…んあ?どこだ、ここ…。随分…綺麗な所だ。ていうか俺はなんでこんなところに突っ立っているんだ。どうも昨夜から記憶が…、いやしかしこんな美しさは、シンドリアにはない。ああ、昨日は確か、謝肉祭でいつもみたいに酒を飲んで、無礼講で八人称と飲んで騒いで。珍しく、ジャーファルも俺を咎めなく、そのまま気分よく眠りについた筈、だが…。

どうして自分が見たこともない所にいるのか、誰が、どういう目的で。とか。色々考えねばならん事は多くあるんだが……ああ、やはり、美しい光景だ。思わず、息をするのも忘れるほどに。何かわからん装置…か?に照らされた桃色の花をつけた木が、暗闇の中に幻想的に照らし出されており、時折吹く風によって花弁がひらひらと落ちてゆく。

なんと、美しい…。

これまでたくさんの国を旅してきたが、こんなに美しい光景を俺は見たことがあっただろうか。その壮大さと儚さを兼ね備えた美しさは、俺とはきっと正反対のものだ。この木々の下、酒を口にする事ができたらどんなにいいだろうか。ぜひともここがどこか、知りたいところである。


まさか、夢、なのだろうか。こんなに美しい光景が夢とは口惜しい事この上ないが、そうとってもおかしくないくらいには、美しい。




「あ、あの…」

…ッ。驚いた。これは、これは……。



「どうかなさいましたか…?」



気配に気づけなかった自分にも驚いたが、夢ならば仕方ないことだ。もし夢でなければ大問題だが。こんなことでは暗殺し放題であるだろ、俺が。にしても、美しいお嬢さんだ。風に合わせて揺れる髪に、まだ大人になり切っていない…しかし子どもでもないその危うげで儚げな印象に合う、この景観と一緒に、その後ろ姿もまるで一枚の美しい絵画の中にでもいそうな……



「ちょ、ちょっと待ってくれ!!放っていかないでくお嬢さん!怪しい者じゃないんだ!君の美しさに呆けてしまっていたんだ!!!」

「え?ああ、はぁ…。すみません」



だ、第一印象と随分違う、まるでマスルールみたいだ…。



「止まってくれてありがとう、お嬢さん。少し尋ねたいんだが…。ああ、俺はシンという一介の商人なのだよ。それで、恥ずかしい話なんだが俺は先程まで酒を飲んでいて眠ってしまい、記憶が曖昧でね。よければここがどこか教えてくれないか?」

「………………………日本という国の首都東京。○○区の○○公園です」



いくら美しくともこのお嬢さんが敵じゃないと決まったわけじゃない。夢ならこの美しい景色と美しいお嬢さんに会えて万々歳なのだが、どうも先ほどから感覚はあるし、ここは夢ではないらしい。そしてありきたりの、お決まりの設定を言えば、何故かなんとも不信そうな顔と沈黙のあとに地名、らしきものを教えてくれたが、俺は首を傾げるばかりだ。これが、俺と彼女の不思議な出会いの始まりであった。






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