短編・小ネタ
□Happy Halloween!
1ページ/1ページ
※番外編。過去拍手で使用しました。
昼間でも肌寒い今日この頃。イタリア郊外にあるヴァリアーの屋敷の中、彼女は吼えた。
「だから!!何で僕がこんなの着るんだい?」
「う"ぉ"お"い!!今日はハロウィンだぜぇ?」
「近づくな!」
包帯でぐるぐる巻きになった自称ミイラ男のスクアーロが持つのは真っ黒の衣装。箒までついているという事はきっと魔女の衣装なのだろう。
「僕は男!!!」
「あ"ぁ"?じゃあボスさんに言ってパーティーは幹部だけにしてもらえばいいじゃねぇかぁ!!!」
らしくもなく彼女の額には焦りから汗が見えている。どうしてもその丈の短いワンピースを着たくないらしい。
「何でわからないかな君馬鹿!?その衣装を着たくないから言ったわけ!」
「んなモン知るかぁ!!」
「僕だって知らないよそんなの!」
聞けばベルもマーモンもルッスーリアも意見一致でこの魔女の衣装になったらしい。レヴィは呼んでいないのは賢明な判断だろうが。
「何がそんなに嫌なんだぁ!」
「僕にも色々あるんだよ!」
ぶっちゃけてしまえば、ここまで頑なに拒否する程に嫌な訳ではない。別に幹部だけのパーティーならば着ても支障はない。ただ、最初に強く否定してしまった為ひっこみがつかなくなったのと、少々気恥ずかしい、というのが半々。彼女にしては何とも情けない理由である。
「しつこい!それ以上強制するつもりならパンプキンパイはあげないよ?」
「ぐ…ッ、」
黙ったスクアーロを尻目にこの場から逃げ出す為彼女はスクアーロから距離を取り、後方へ駆け出した。
これで何とか今日1日乗り切れそうだと高をくくったのがまずかった。
「オイ」
「…………………、」
さぁっと、彼女の顔から血の気がひく。
「聞いてんのか」
「、はい。何か御用でしょうかザンザス様?」
早く逃げ出さないと、不味い。内心思いながら笑顔を貼り付けて彼を窺えば、ザンザスは後ろ手に持っていたものを彼女へと突き出した。
「…これは、まさか」
「着ろ」
「……………」
「命令だ」
「……………」
ふわふわ、リアルファーのチューブトップにミニスカート。ご丁寧に獣耳まで用意されているそれを見て彼女の顔は今度こそ蒼白になった。さっきのワンピースの方がまだマシだった、と。
「う"ぉ"おい、観念するんだなぁ」
ボスの命令を、断れない事を知っていて、彼女の真後ろまで迫っていたスクアーロは笑う。作ったパンプキンパイは全てディーノにあげようと心に決めて、彼女は肩を落とした。
Happy Halloween!