宝物小説

□まいご様より 花田+阿三
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「何してんのこいつら」
数分後、花井と田島を探しにきた阿部と三橋は、探し人を発見した。草原の上で起きる気配のないサードとライトに、ピッチャーはぽつりと囁く。
「いいな…」
聞き逃さなかった阿部が三橋を振り返ると、三橋はびくっと体を震わせて首を横に振る。
「あっ、あっやっ、れ、練習が大事、だよね!」
「…んっとに、仕方ねえなあ」
阿部は草原に座ってぶっきらぼうに三橋を手招く。慌てながらも三橋はおずおずと阿部の隣に膝を着いて小首を傾げた。
「い、いいの?」
「どうせ栄口あたりが探しにくるだろ。それまで、な」
唇を上げて笑う阿部を見つめて三橋はへにゃりと笑い、柔らかく阿部の腕に包まれる。
無意識に擦り寄ってくる三橋に、阿部はその髪に鼻先を埋めて目を閉じた。
幸せの匂いがした。




遠くで犬の鳴き声がし、田島はぱちりと目を覚ました。眠気を引かないすっきりした脳で現状を理解し、花井の穏やかな寝顔ににししと笑う。すると、控えめに自分を呼ぶ声がするのに気付き、花井とは反対側に顔を向ける。そこには顔を赤らめた三橋が、阿部に抱き締められる形で横になっていた。
「たじまくん」
「お、三橋!」
「お、おはよ、う」
「何、阿部と昼寝?」
三橋はこくんと頷いて、阿部を起こさないようぼそぼそと小さく声を絞りだした。。
「でも、は、恥ずかしくなって…」
「あー、目ぇ覚めちゃったんだ。うわ、阿部マジ寝じゃん」
疲れてんだなーと田島が言うと、三橋は阿部を見上げて顔をくしゃりと歪めた。疲れているのは自分が負担を掛けているせいだ。
そんな三橋の思考に田島は気付いてにっと明るく笑い、控えめな声で囁いた。
「でも、今は三橋でいやされてんだよな!」
一節間を開け、二人でふへへと笑う。遠くで4人の名を呼ぶ声が聞こえたが、しばらく暖かな空気に浸されていた。
また一緒に昼寝しよう。
のちに目を覚ます恋人に囁く言葉を胸に秘めて。






――――――
夢の中にはわらうあなたが。




end
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