text「parallel」

□あなたとワルツを1
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休館日の資料館は足元のライト以外は真っ暗で、がらんとしたその空間は、それほど大きな音は立てていないのに靴音が廊下一杯に響いた。

休館日のうえ、さらに深夜。

警備室のモニターは、マジックが入口の施錠を解いた時点ですでに静止画に取り換えられている。
コンピュータ制御で開く管理室のドアも、音に気付いた警備員が開こうとした時には、開くどころか、外部との通信も遮断されているだろう。
小さな携帯一つで、最新式の資料館は無防備に内部をさらけ出していた。
「シンタロー」
イヤホンからマジックが俺を呼んだ。
俺は携帯電話を開く。
待受画面のマジックが前方を指差した。
顔を上げると、展示台にパッとライトが点灯し、小学生ぐらいの背丈の真っ白なロボットを照らした。
二足歩行をするロボットとして、昔、有名になった奴だ。
「後に受信用パネルがあるから、そこに携帯を向けてくれないかい」
どうやらロボットに乗り移る気らしい。
「展示品だろ、動くのかよ?」
「デモ用に充電してあるんだよ」
展示台に乗り、背後を確かめると、リュックサックのようなバッテリから、コードが伸びている。
その先にあるコンセントを抜いて、俺は頭部の黒い小さなパネル部分に携帯を向けた。
しばらくして「OK」とイヤホンから奴の声が聞こえると、次の瞬間、ピッと機械音がしてロボットの頭部がくくっと動き、俺の方を見た。
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