text「parallel」

□永遠の青2
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永遠の青 2



夢を見た。

流木にしがみついている青白い顔の私が、波に揺られている。
紺色の海原では、その存在はとても小さく、人魚でなければ見つけられなかっただろう。
人魚は死体のように冷たい私を抱くと、流線型の美しい体を大きく揺らした。

青い景色が流れていく。
水そのもののように、その身は波に乗り、水泡と共に瞬く間に私を砂浜へと運んだ。
横たわった私の身体には胸の辺りに大きく傷があった。すでにその傷の出血は止まっていたが、紫色に変色して、ますます死体のようだった。
・・・いや、死体ではなかったのだろうか?

その時。
頭の中で声がした。

どこかで聞いたことのある声だ。
声は、
『この男を助けたいか?』
と人魚に訊いてきた。
頭の中で声がするという事にさほど驚く事もなく、人魚は、
「もう死んでる」
と答える。
『仮死状態にしてある。お前が望むなら助けてやろう』
なぜ、声はそんな事を問うのだろうか?
私はふと疑問を感じたが、人魚はそのような疑問は持たなかったようだった。
「じゃあ、助けて」
当然のように、そう答えた。
『この男の腰に皮袋があるだろう。その中に私が入っている。それをこの男の胸に当てろ』
人魚の手が腰を探ると、青い玉が出てきた。それは私が王宮で盗んだものだ。
玉璽として、王の持つメイスに納まっていた秘宝中の秘宝である。
王の殺害を企てたものの、失敗した腹いせに奪ったのだった。
「これか?」
取り出した玉を私の傷へと持っていく。
すると、それは内側から光り始め、青い光の玉になり、一瞬、世界を青く染めた。
そうして、その光が収まると同時に、人魚の手から玉は消えていた。
どういう事なのかは分からないが、玉は私の身体の中へ入ったようだった。
その私の身体は、みるみるうちに赤みを取り戻し、胸の傷が癒えていた。
さすがの人魚も、その不思議な現象には驚いたようだった。私の胸をまじまじと眺め、それから頬をつける。ゆっくりと上下する胸は温かく、血の流れが海の中のような響きをしている。
人魚はうっとりとその音を聞きながら、目を閉じた。


・・・これは、シンタローの記憶だ。
人魚が私を助けた時の記憶なのだ。
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