text「parallel」

□魔術師は見た。
3ページ/7ページ

畳。
・・・・だから寒いって。
ぶるりと背筋が震えて、俺は目を覚ました。
「シンタロー、急に意識が無くなったから、私が運んであげたよ」
俺はアパートの自室に転がっていた。
隣にはピンクスーツが座っている。
「・・・寒い。なあ、悪いけど布団取ってくれないかな・・・俺、風邪引いて動けない」
悪魔に布団を頼むなんてどうかと思うんだが、今はこの寒気をどうにかしたかった。
すると、奴はひょいと俺に顔を近づけてきた。
「シンタロー、すごく熱いよ。それなのに寒いのかい?」
熱があるから寒気がするということが、悪魔には分からないらしい。
「・・・うるせえ。誰のせいだと思ってるんだ・・・」
奴は少し首を傾げ、それから何かに気付いたように少し眉を上げた。
顔がさらに近づく。

ぺろり。

額を舐められた。汗でも出てたのか。
「シンちゃん、苦い」
「・・・・」
馬鹿野郎!!!
怒鳴ってやりたかったが、俺は目をぐるりと動かせただけで、身体は言うことを聞かなかった。
「・・・・あ・・・あほ・・ぅ・・・。俺は、風邪、ひぃ・・・てんの」
「風邪?風邪・・・ああ、病気ってことか。なるほど」
「だから!早く、布団、くれよ・・・」
コイツと話してるだけで、俺の体力ゲージがどんどん減っていく気がする。
俺がぜえぜえ言っているのを気の毒に思ったのか、奴はにっこりほほ笑んだ。
「OK」
奴の一言で。

・・・・ドサドサドサッ

俺の上空1メートルから、突如、布団が落ちてきた。敷布団と掛け布団と毛布が俺に覆いかぶさる。
「ぐへっ」
「これでいいのかな?」
「・・・・・・・今度は上からじゃなくて置いてくれ。っていうか敷いて・・・・」
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ