text「parallel」
□はらぺこてじなし
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夜目にも鮮やかなピンクのスーツが、店の裏口の壁にもたれていた。
おお。でけえ。
俺も十分でかいが、その、すらりと伸びた足は外国人特有のスマートさで、壁の汚さと相まって、ちょっと絵画的ですらある。
それはピクリとも動かなった。
うーん、ホストの兄ちゃんかなあ?
ここは繁華街だから、酔いつぶれてしまったホストがいてもおかしくはない。
もっとも、ゲロを吐かれてしまうのは迷惑だが。
俺は近づいて、男の伏せられた顔を覗く。
そこに深く刻まれた皺を見つけて、自分の想像力の貧困さに呆れた。
なんだ、オッサンかよ。
身なりは、服のセンスはともかく、小奇麗でそれなりの地位の男に見える。酔客かと思ったが、酒の匂いはしない。
「オイ、アンタ。こんなトコで寝てると襲われるぜ」
肩を揺すった。
そうしながら、周囲を見ると、男が何も持っていないらしいことに気づく。
・・・もう、襲われた後か?
交番に連れて行かねえとなあ・・・と思いつつ、ぺちぺちと頬を叩くと。
パチ、と目が開いた。
「・・・・・」
無言のまま、顔を上げた。
男は、人形みたいに澄んだ青い眼をしていた。
「えっと・・・・」
まばたき一つせずに、男が俺を見ている。
そして、いきなり。