text「parallel」
□ハウルのようなもの(仮)
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なあ。
アンタは、本当は。
俺に触れて欲しいんじゃないか?
いつもみたいに、キスして欲しいんじゃないか?
今、ここを去ったら、俺はもう二度と会えないんじゃないだろうか。
どう考えても、ここは押し入れの中じゃないし。
治らなかったら、こいつは、こんな姿でこの世界に来たりはしないだろうから。
「・・・・・」
それなら。
今、俺は何ができるだろう。
普通にさよならって言って、別れたりなんてできない。
『シンちゃん。早く戻りなさい。今は、まだ、ここは部屋と繋がっているけどね。私がこれ以上、制御できなくなったら、ここも危険になる。もしかしたら、二度と地上には戻れなくなるよ』
そんなの確定的じゃないか。
もう二度とアンタに会えないって。
『シンちゃんにくっついたり、キスしたりするの、とっても楽しかったよ。ありがとう。
言っておくけれど、悪魔が感謝なんて、まずしないんだからね!』
りぃんと美しい音色が響いた。
「もう会えないのか?」
『多分』
「そうか。じゃあ、餞別やるよ」
俺は、覚悟を決めた。