text「小品」

□青∩赤2
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小指の感触がまざまざと思い出される。

いやいや絡ませたのに、繋がってしまうと喜んでいる自分がいるということを、俺は自覚している。
そんな事、絶対に、アイツには言ってやらないけど。
思い出して、顔が熱くなる。
誰も見てはいないが、恥ずかしくなって、膝に顔をうずめた。

この場所も良くない。

先週、ここで、アイツとセックスした。

ぐったりした俺を、戸棚からタオルを取り出して、慣れた手つきで清める男。
その仕草に、俺は泣けてきた。
自分が情けなかった。
こんなに翻弄されてしまった自分に。
立ち上がれないぐらいに、欲望をさらけ出してしまった自分に。
「愛してる」と囁かれる度に、恐くなる。その言葉が嘘じゃないと分かっている。

だから、怖い。
突き刺さるんだ、言葉が。
痛みで涙が出る程に。
青い目が俺を見て、それを受け止めきれなくて、いつも目を閉じてしまう。

ごめん。

こんな俺を見られたくない。
いつまでも、アンタを拒む俺を許してほしい。

・・・・俺は。





試してるのかな?
アンタを。


俺が何をしたって、アンタは俺から離れないって。

「クッ・・・」
おかしな考えに、喉が鳴った。

何かされてるのは、俺の方じゃないか。
痛い思いをしてるのは俺の方だ。
アイツじゃない。

でも。

どうしてかな?
アンタの方が、苦しんでると思う時がある。
そういう時、本当は、どうしたらいいか、俺は分かってる。

できてないと思うけど。

・・・・・・・・・。



顔を上げて、洗濯機を見る。

ドラムの中で、洗濯物は上がったり、下がったりしている。

「早く帰ってこいっつーの。・・・・俺が暇してんだから」

会いたいよ。

ココには、アンタがいるのに、足りない。




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