text「escalation」

□darkness
2ページ/2ページ

「パパ!」
シンタローが目を開いた。
目の前には、大好きな父親が覗きこんでいる。
シンタローはベッドに寝かされていた。
「シンちゃん、どうしたの?」
優しく言われて、シンタローは「パパ!」と叫んで、マジックにしがみついた。
「よしよし。何か怖い夢を見てたんだね。もう大丈夫だよ」
見ると、自分はパジャマを着て、いつものベッドにいた。隣にはクマのぬいぐるみ。
「夢?」
「そうだよ。シンちゃん、さっき、うなされてたみたいだから、パパ、心配でちょっと様子を見てたんだ」
シンタローはキョロキョロと辺りを見渡す。
「おじさんは?」
「おじさんって?」
「パパと同じ目の色の人・・・パパを殺すって・・・」
「大丈夫。それは夢だよ。そんなおじさん、いたら、パパが追っ払ってあげる」
「ホント?」
「ああ、もちろん。パパはとっても強いんだから。シンちゃん、知ってるでしょ?」
「うん・・・」
「だから、安心してお休み。ちゃんと眠るまで、ココにいてあげるから、ね」
シンタローは、再び、ベッドに寝かされる。
「ねえ、パパ。僕『できそこない』なんだって。夢のおじさんが言ってた」
「・・・シンちゃん。夢のおじさんの言った事は嘘ばっかりだから忘れなさい」
マジックは声が震えそうになるのをこらえた。
「はい。パパ、お休みなさい」
「お休み」





子供部屋を出たマジックに、控えていた部下が報告した。
「処理は完了しました」
「そうか、ご苦労。我が血族ながら、何とも情けない者がいたものだ。うんざりするよ」
「申し訳ございません。今後、シンタロー様への警護は強化いたします。一族の方でも警戒を怠らぬように」
「そうしてくれ」
マジックはそう答えると、今、後にした子供部屋を振り返った。

あの子の守りを固めなくては。
このままでは、いけない。



終わり。
2009/5/9
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ