text「escalation」

□Pink!
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「いらっしゃ〜い、シンちゃん!」
グンマがパタパタと走り寄って来た。
後ろから高松がマジックに会釈して、リビングへと案内する。
「パパとケーキを作ったんだぜ!」
自分は見ていただけだが、シンタローが得意げにグンマに言っている。
マジックは微笑みながら、ケーキを入れた包みを示して、
「いっぱいあるから、一緒に食べようね」
と、グンマに言った。
「では、お茶でもお入れしましょうか」
そう言うと、高松はキッチンへ行く。
マジックはケーキの包みを、子供たちにも見えるようにローテーブルに置いた。
「グンちゃん、開けてごらん」
「はい、伯父様」
小さな手がリボンを解く。
子供達二人の目がきらきら輝いている。
ぎこちない手が箱を開けると、歓声が上がった。
「伯父様すっごーい!」
「すごい?やっぱりすごい?」
隣のシンタローも鼻高々だ。
その様子を眺めていると、高松がティーセットを運んできた。
「ああ、私が淹れるよ」
「ありがとうございます」
別のテーブルにそれらを置き、高松は子供用のジュースをグラスに注ぎ、マジックは茶をカップに注ぐ。
「せっかくの休日にありがとうございます」
高松が礼を言う。
「いやいや、気にしないでくれ。グンマの誕生日パーティには顔を出せそうにないからね」
お互い子育ては大変だな、と笑いあった時、
「うわああああああああん!シンちゃんのバカッ」
「うるさい!お前こそ!なんだよっ!!!えええん!」
と、二人分の泣き声がした。
「シンちゃん!?」
「グンマ様!?」
大人二人が振り返ると、身体中、ピンクのクリームにまみれた二人が取っ組み合いをしている。
ローテーブルの上はクリームだのスポンジだのが散らばって、ケーキは無残な姿になってしまっていた。
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