text「小品」

□copy art - cyan
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copy art - cyan


赤と青は補色の関係にある。
嫌みな程の赤い服が、目の前の男の冷たい相貌をより一層引き立てているような気がして、ジャンは目を閉じた。
もっとも、自分はそんなモノに動揺する事はないな、と自嘲気味に頭の隅っこで考えながら。
目を閉じた世界には何も見えないが、男の手が自分の衣服をはがし、素肌をまさぐり、肉の割れ目の奥に潜む一点に触れた時、自分がひどく欲情しているに違いないということは分かった。それもまた、身体だけなんだと思いながら。
何度も男の侵入を許してきた場所は、人差し指に塗られただけのクリームで、もう十分に潤い、後は男を待つばかりだ。
ジャンは一切抵抗しない。
同性との行為に抵抗感もない。
どうせ死なない身体で、それは目的の為のツールの一つだと考えるからだ。
道具に、メンテナンスは必要だろうが、心はいらない。
与えられた快感に、身体が猛るのはそういう構造だからだ。
むしろ。
少し位、楽しんでも構わないとさえ思っている。永遠に続くであろう番人生活に、僅かな悦楽があっても赤い玉は文句は言わないだろう。
それでも。
ジャンは、自然に出る喘ぎ以外は特に何もせず、ただ男の言う通りにしている。楽しむでもなく、悲しむでもなく。
「ジャン」と男が誘うように言った。
ジャンは黙って、膝をつき、そそり立った男を口に含んだ。
男の人並み以上の物を咥えて、頭を振る。室内に濡れた音だけがする。
「もういいよ」
しばらくして、男が制止した。名残惜しそうなふりで、ゆっくりと抜くと、糸を引いた。
「欲しい?」
男が尋ねた。
ジャンは黙って頷いた。
さっさと挿れて、終わって欲しい。
男が、足を上げろと言った。ジャンはあお向けになって足を上げた。
半勃ちの幹が揺れる。
咥えただけだったが、身体は快楽を覚えていたようだった。
拡げろと言われて、ジャンは指でその場所を拡げて見せた。火照った粘膜に外気が当たる。
自分は何をやっているんだろう、とふと思った。
屈辱的な体勢をとらされるほどに、心は冷えていく。
ぼんやりしていると、男が圧し掛かってきた。熱さに喘ぎが漏れる。
どうせならこの熱さで頭の中の全部を燃やしつくしてくれたらいいのに、と思ったが、叶わなかった。
いつも、寸での所で熱さは消え、燃え残る。
快感は一瞬で、放出してしまえば、さらに心が冷えるだけだった。
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