text「小品」

□copy art-posi
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壁に押し付けられた体勢で、後ろから男を受け入れる。
二人とも荒い息をするだけで、愛の言葉どころか、名前すら呼ばない。
「あ、・・・ぐぅ・・・!」
下腹部から何かがせり上がって、『俺』は呻いた。
腹の中に熱い液体が滲んで、それから、楔は抜かれた。
乱暴な行為で傷ついて、『俺』はずるずると壁を伝って、しゃがみ込んでしまった。
尻から、どろりと液体が漏れていく。
背後に立つ男は、何も言わず、白いハンカチを差し出した。
受け取って、尻に当てる。
「・・・・出て行って下さい」
『俺』が言うと、男は無言で部屋を出て行った。
扉が開かれた時、廊下の灯りが漏れて、男の姿を照らす。
鮮やかな赤い服。
怒りも、憎しみも、ましてや愛情もない。
求められたから答えただけだ。
この肉体は道具。
使命の為の、ただの道具にすぎないのだ。





朝。
ベッドの中で目覚めた瞬間、俺はもう暗闇にいた。
朝から、だるい。
夢は、それは現実ではないのに、俺の中には、まだ夢の中で注がれたモノが残っている気がした。

「ひでえ夢だな・・・」
呟いて、すぐに否定する。

夢なんかじゃない。
あれは、過去だ。
まぎれもない現実だったんだ。

俺の、オリジナルの。
そして、俺の父親の。
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