text「escalation」

□Pink!
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キッチンには、銀色の大きなボウル。
隣には真っ赤なグレナデンシロップの入ったボトル。
それから生クリーム。
大きなテーブルの上にはまあるいスポンジケーキがどんと置いてあるけど、小さなシンタローにはちょっと手が届かない。
マジックは、ボウルになみなみと生クリームを注ぎ、砂糖を入れ、シロップを数滴たらす。
ハンドミキサーがぎゅううんと音を立てて、それを攪拌した。
しばらくはマジックの周りでうろうろしていたシンタローだけど、小さいからボウルの中身が見えない。
思いついて、椅子をガタガタと引っ張って、その上に登り、ようやくお目当てのボウルの中を見る事ができた。
「わあ。ピンク色」
「フフ。グンちゃんはピンク色が好きだからね。今日のおやつはコレを持って、グンちゃんのところへ行こうね」
小さな手がそのピンク色のクリームに伸びる。端っこをちょんと触ると、指にピンク色のクリームがついた。
シンタローはそれをぱくりと口に運んで、ニッコリ。
「おいしい!」
「コラ、シンちゃん」
注意はしているが、マジックの顔は笑っている。
出来上がったクリームを絞り器に入れて、スポンジを可愛くデコレーションする。
「はい、出来上がり」
イチゴをたっぷり載せたピンク色のケーキが完成した。
「パパ、すごいねえ」
シンタローはケーキを縦に見たり、横に見たりして、はしゃいでいた。
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