倉庫


□弁護士と検事のクリスマス
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12月25日 午後11時52分
成歩堂法律事務所


夕方に"ツタンカーメンの謎に迫れ!ピラミッド型トリプル"という、絶対クリスマスとは関係ないものを買い、半分を平らげた真宵ちゃん。そんなに食べられないんじゃなかったのか?
満足そうに数時間前に帰宅した。僕は先に仕事を終わらせようと思って、残りは冷蔵庫にしまってもらった。気付けば日付も変わりそうな時刻。御剣達は今頃報告書まとめてるかな。

「……」

今になって分かった。クリスマスに彼女がいるからこそ特別に感じる。今更仕事を中断して来て欲しかったなんて遅い。

「それ以前に僕のわがままか」

大きく伸びをして寝ようかと思った時、ノック音が聞こえた。鼓動が速くなる。

まさか、まさか

急いで廊下に出て透明な扉の外を見る。暗い外の中、街灯の明かりに照らされて彼女が立っていた。白い息を吐きながら。
扉を開けると冷たい風が入ってきて、熱くなった頬を程よく冷ましてくれた。

「どうして……」

ようやく出てきた言葉がこれとは余りにも酷い。でもたぬたんちゃんは赤くなった鼻を気にしながら微笑んだ。

「残りの仕事は明日に回してもらった。夕飯まだなんだ、付き合って貰える?怜侍くんがお寿司くれて」

はい、と差し出された箱。僕はそれを受け取らず彼女を抱き締めた。お寿司は勿論床に落ちた。でも、彼女も答えるように背に手を回してくれた。

「クリスマスに間に合った?」

その一言が何よりも嬉しかった。




おまけ

勢いとはいえ、下に落とさせてしまったお寿司の箱を机に置き、たぬたんちゃんに向かって深く頭を下げた。

「ごめん!せっかくのお寿司を……」
「まぁまぁ、口に入れば一緒だよ」

にこにこ笑って気にするなと言ってくれるから余計に申し訳なくなる。だが、蓋を開けて中身を見て僕達は口を噤んだ。

「……ちらし、寿司」
「味覚が子どもと思って馬鹿にして……」

でも、味覚が子どもな僕達は喜んで食べたのだった。
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