倉庫


□ユーリは学園コスを見つけた
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道具袋を整理していると、底の方に見覚えのない服が入っていた。いつの間にこんなのが紛れ込んだんだ?掴み出してみると、どこかで見たことのあるもの。

「あぁ、ナム孤島か」

学園とかいうところの制服に似ている。上下合わせて9着と、ラピード用らしきものがある。

「ユーリ、どうしたんですか?」

そこにエステルとリタがやってきた。俺は女物の服を適当に持って2人に合わせた。

「これがエステル用か」
「何ですか?これ」

1人納得していると不思議そうにあてていた服を見る。それを彼女に押し付け、リタにも彼女のらしい服を渡すと他の服を抱えた。

「2人の服だ。道具袋に入ってたから、気が向いたら着てみたらどうだ?」
「わぁ、可愛いです!リタ、着てみましょう」
「そ、そこまで言うなら着ても良いわよ」

リタがエステルに引き摺られるように船室に戻っていく姿を見送り、俺は他の仲間にも配り歩いた。




後方の甲板の方に行くとフレンが素振りをしていた。相変わらず真面目な奴だなと溜め息を吐くと、その横にたぬたんとラピードがいるのに気付いた。フレンを見ながらラピードに話し掛けているようだ。

「フレンは努力家だよね、毎日ちゃんと欠かさず」

感心したようにアイツを褒める。そうだよな、そういう奴が誰だって良いよな。自虐的に考えているとラピードが急に訴えるように吠えた。するとたぬたんは微笑んだ。

「うん、分かってる。ユーリは天性だよね」
「ワオーン」

たぬたんの思いを少しばかり知れた。俺は甲板に足を踏み入れ、お前に向かって手を上げた。

「あ、ユーリ」
「よう、日向ぼっこか?」
「それも兼ねてフレンの練習見学」

アイツの方を指さして促すと、素振りを止めてこっちを見た。

「ユーリ」

笑って近付いてくるその顔は、大抵の女ならすぐ惚れそうな輝きを持っている。まぁ良い奴だってのは認める。堅物を除けば。

「珍しいね。君も鍛錬かい?」
「まさか」

俺は鼻で笑って手に抱えていた物を見せつける。

「面白いもん見つけてな」

その場に服を置き、2人と1匹を呼ぶ。

「面白い物って服かい?」
「あぁ、ナム孤島で見た制服と似てるだろ?」

広げて見せると、確かにとフレンが頷く。

「せっかくだから着てみないか?たぬたんとラピードの分もあるぞ」
「本当?じゃあラピードは私が着せてあげるね」

そのまま船室に向かうのかと思ったが、一向にそこから移動しようとしない。どうしたのかと見ていると、たぬたんが「あのー」と言いにくそうに口を開いた。

「互いに反対側を向いて着替えよう」
「!」
「ここで着替えるのか?」
「ユーリ、いつまでそっちを向いてるんだ!」

腕を思い切り引っ張られ、船室の壁に顔をぶつけた。洒落にならねぇ。「お前なぁ」と怒り半分で睨むと、フレンの顔は真っ赤だった。どんだけこういうのに弱いんだよ。

「うぶ」
「うるさい!」

小さく言うと大声で返される。怒る気も失せて苦笑しながら着替え始めた。きっちりとした服は騎士団以来だな。

「ジュディスを常日頃から見てたら少々のことじゃ驚かねぇだろ」
「あれは服だと分かっているから何とも思わないだけだ。下着は別物だろう?」
「昔はしょっちゅう見てたのによ」
「昔と今は違う」

きっぱりと言い切るフレンに、俺はにやりと笑って軽く小突いた。
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