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□弁護士と検事のクリスマス
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12月23日 午後6時00分
成歩堂法律事務所


「ねーなるほどくん、ケーキが食べたい!」

今年請け負った依頼人(事件)に関する資料を整理している時、真宵ちゃんが後ろから抱き付いてきた。

「ケーキ?シーズン中は高いでしょ、過ぎた頃に買ってあげるよ」
「あー!だからなるほどくんはモテないんだよ」

耳元で大声を出されたものだから、驚いて耳を塞いで振り返った。まだ鼓膜が響いている。

「な、何だい急に」
「分かってない!クリスマスに食べるからこそ!特別に思えるんだよ。それを過ぎた頃にとは……はぁ〜」

哀れな目で見てくる真宵ちゃん。僕が可哀想な人みたいな感じだなぁ。しまいには駄々を捏ね出して、僕の座っている仕事椅子をくるくると回し始める。き、気持ち悪い!

「わわわ分かった、分かった!買ってあげるから」

そう言った瞬間ぴたりと椅子が止まる。何か資料が辺りに散らばってるんだけど。

「やったね!さっすがなるほどくん、太っ腹!」

喜んだかと思ったら、どこからか広告を取り出して机の上に置く。どうやらケーキ屋の広告のようだ。

「真宵ちゃん……1人で1ホール、しかも大きいの食べる気?」

「何言ってんの、なるほどくんとミツルギ検事とたぬたんさんも一緒だよ」

たぬたんちゃんとは検事で、今は御剣に見込まれて彼の助手をしている。小学4年の時のクラスメイトだった子なんだけど。

「あの2人は僕らと違っていつも仕事があるから、クリスマス空いてるとは限らないよ」
「じゃあ今から聞いてみてよ、一応勤務時間は過ぎてるし」
「やれやれ……」

口ではそう言っているけど、内心嬉しかった。彼女に電話を掛けるなんてほとんどないし(御剣同様忙しい)、当分会ってもない。
何より……その、僕の恋人だから。
ケータイを取り出し、彼女の登録番号に掛ける。プルル、と数回コールの後、彼女の声が聞こえてきた。

『龍一くん、久しぶり』
「本当久しぶり。今大丈夫?」
『はいどうぞ』
「明日か明後日、御剣と一緒に僕の事務所に来られないかな」
「パーティしましょう!」

真宵ちゃんがケータイに向かって大きな声を出した。すると、うーんと唸り声がして苦笑が返ってきた。

『もう数日早く誘ってくれてたら良かった。裁判が入ったんだよ、その2日間。だから今資料集めてるんだ』

バサッと大量の紙が机に置かれるような音が聞こえてきた。これはマズイ時に電話してしまったかな。

「ご、ごめん、呑気な電話しちゃって」
『気にしない気にしない。クリスマスは事務所にいるってことだよね?』
「うん、僕も資料の整理があるし」
『うんうん、行事関係なしだよね私達』

笑い声と混じって男の声が聞こえてきた、御剣だろう。たぬたんちゃんはその男に返事をした。

『ごめん、今度そっちに寄るから』
「こっちこそごめん、頑張って」

大した会話もできず通話は終わったが、彼女の声が聞けただけでも良しとしよう。真宵ちゃんの方を見ると残念そうな顔をしていた。

「裁判なんかクリスマスくらい休みにすればいいのに……折角うぶななるほどくんのためにたぬたんさんと過ごせる時間を作れると思ったのにー」
「余計なお世話だよ!でも、そうもいかないのが世の中だよ」

世知辛いと彼女は呟き、ケーキの広告の1点を指した。

「しょうがない。じゃあ2人で攻略しよう!この"奇跡!倒れない謎の逆三角形ジャンボケーキ"を」
「異議あり。名称からして不安」
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