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□その出会いがあったから
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昔の私は、人の温かさを知らなかった。
そう、あの子に会うまでは…――――


私は"印付き"という存在で、そのことがばれぬようにと、闇に紛れるようにして過ごしてきた。
印付きは、ベオクと比べて長寿である。
私は生まれてから何年、何十年生きたかは分からない。
もしかしたらもう、何百年も生きたかもしれない。
…誰とも関わらずに暮らしてきたから。
…ただ孤独に、過ごしてきたから。
時間の感覚なんて…分からない。
人の温かさなんて…知らない。
だって…ずっとひとりぼっちだったんだもの。


…そんな時に出会ったのが、一人の少年だった。

目つきが鋭くて、ボロボロの服を着て、私のように人との関わりから離れていった少年。
その少年は、私を威嚇するようにキッと睨んだ。
“俺に近づくな!!”

とでも言うように。
でも、私はそんな事をお構いなしに少年の腕を掴んだ。
何故だかは分からないけど、無意識に。

「…………」

少年の腕は、凄く細かった。
ガリガリで…例えるなら、細い木の枝のよう。
少しでも力を入れたら、折れてしまいそうで…
その腕を握った瞬間、私は思った。
…この少年も、私のように“人”を知らない、と。
この少年も孤独なのだ、と。

「………ッ!」

…もう私は、この少年を放すことが出来なくなった。
放せない…放したくない。
その時の私はまるで、玩具を取られまいとする子供のようだった。

この子と一緒にいたい。
そう思った。
私は少年を抱き締めた。
そして、私に伝わってきたほんのり温かい、温もり。
その時、私は生まれて初めて人の温もりを知った。

「…私と、一緒に来ない?」

私は少年に言った。

「…………」

少年は黙ったままだったが、少しだけ頭が縦に動いた気がした。


そう。

あの時の少年に会ってから、私の人生は大きく変わった。
今では、人の優しさを知っている。
人の強さを知っている。

彼に出会っていなければ…

こんな気持ち、知らなかったと思う。




…サザ。

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