★MGS小説

□今はそばにいない君
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そのまま床の上で抱き合い、まだ熱が冷めてない状態のウルフの髪を触ると、くすぐったそうに彼女は肩をすくめた。
「毎晩していて、その……身体は大丈夫かい?」
ウルフは毎日訓練もしてるようだし、身体のトラブルは控えるべきだろう。
「大丈夫……博士より身体は丈夫にできているから」
僕のストレートすぎる質問にたまらないといった様子で笑い、キスで答えてくれる。
彼女のシルクみたいな肌ざわりの唇は、いつも僕を夢中にさせた。
キスを楽しみ唇を離し、そのまま抱き寄せて赤く上気している頬にキスすると、恥ずかしいのか身じろぎをした。
いくつも年上の僕の事をいつも子供扱いするくせに、こういうところは可愛い。
「本当に?」
「しつこいな……博士こそ、疲れたりしていない?」
どこか甘い、他愛ない会話……いつまでも二人でこうしていたかったが、時計を見るともう真夜中だった。
僕は帰り支度を始める事にした。
「さてと……そろそろ部屋に帰ろうか、君も明日は早いんだろう?」
身仕度を済ませて端末の電源を落としながら、気まずくならないように普通に声をかける。
ウルフは足元に散らばっていた書類をまとめて僕に渡し、こくんと頷いた。
「それに明日は演習の後、博士のREXを見に行く予定になっている……リキッドと一緒に」
ウルフの口から彼の名を聞くのは、正直いい気はしない。
彼女とリキッドスネークが他のフォックスハウンドの隊員たちと比べてより密接な関係にあるという事は、鈍い僕でもさすがに気付いていた。
「ああ所長から聞いているよ、明日の午後からだろう?」
幼稚で醜い嫉妬心に気付かれないよう簡単に流して、彼女から受け取った書類を机の引き出しに放り込み鍵をかける。
「REXはアームズテック社の総力を注いで作った素晴らしい兵器だと、リキッドから聞いている」
抱き合って乱れた金色の髪を直しながら、ウルフは言った。
「演習の為とはいえ、一般に情報公開される前に見ることができるのは光栄だ」
「まあね……まだ完全に出来上がったわけじゃないからそうなる予定だというのが本当のところだけど」
リキッドの話題が出るのは嫌だが、彼女にREXをある程度認めてもらっているというのは素直に誇らしく感じた。
REXは長年暖めてきたプロジェクトだったし、僕が本当に作りたいと思った物だったからだ。

居住楝に行くには、一旦外に出る必要がある。春が近いからといってもアラスカはまだ寒い。
僕はコートを羽織り、ウルフと一緒に研究室の外に出た。

「ウルフ……やっぱりここに居たか」
研究室のドアをロックすると、廊下の曲がり角から見慣れた姿が現われた。
背が高く、均整のとれたシルエットが近づいてくる……ウルフは僅かに眉を寄せ、怪訝そうな顔をして声のする方向を眺めた。
「リキッド……何の用?」
フォックスハウンド隊員が揃って着ている茶色の革製のコートの上には、整った顔が乗っている」
リキッドの容貌は、例えるならハリウッドのアクション映画で主役をやっているようなタイプだ。
金髪碧眼で精悍で、青い両目はいつ見ても活力に満ちて不思議な魅力があった。
「博士と楽しい話をしている最中に邪魔してすまないが、数日後の演習について話がある」
彼は僕とウルフの関係になんとなく気付いているようだった。
「すまないな、博士」
どこか嫌味っぽい芝居がかった笑顔で僕に詫びると、ウルフを手招きして来た道を引き返して行く。
「おやすみ……また明日ね」
名残惜しい気持ちで、なんとか別れの言葉を口に出すと彼女は頷き、リキッドに続いて歩いて行った。
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