★MGS小説2

□始めの儀式
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「何を考えている?」
上官に問われ、ソローは肩をすくめてみせた。
「また昔の女の事を考えてました」
上官は溜息をついて、嘆かわしいと言わんばかりに手で目を覆った。
「お前にこの質問をすると、決まってそれだな」
三十も年下の上官に、ソローは笑って言った。
「暇さえあれば考えているもので」


疲れて眠るとやけにベッドが心地良い。おまけにここはイギリスの陸軍隊員宿舎でシーツも清潔だ。羽根枕に顔を埋めると洗剤と日なたの香りがする。
寝返りを打ってシーツの間に身体を潜り込ませると……誰かが滑り込む気配がした。
いつもなら飛起き、不埒な相手を投げ飛ばしてやるところだったが、今日は勝手が違った。その気配を待っていたかのように、不思議と身体から力が抜けた。
そうこうしているうちに相手の手の平が身体に触れた。
大きさからみて、男の手だろう。ゆっくりと肩から腕へと滑っていく。
口を開けたはいいが、声も出せない。どんな理屈かは分からなかったが、声自体が奪われてしまったかのようだった。
開けたままの唇に、相手の唇が重なった。優しい感触が、うっとりする程心地いい。
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