★MGS小説2

□あの子を見ていて思う事
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女の子の成長は本当に早い。10歳を過ぎるといつの間にか恋なんてして、教えた覚えもないのに綺麗に化粧する方法も知り、あっという間に大人の女性になっていく。
サニーも今年でもう20歳だ。髪は今でも飾り気のないショートカットで最近は母親の面影も色濃く出てきたけれど、オルガとは違い女性らしい甘さの漂う容姿になった。キーボードを打ちながら時折髪をかき上げる仕草もなかなか可愛らしい。
「そうだ、父さんも一緒にハワイに行かない?」
モニターから視線を外し、僕を見ながら訊いた。向けられる笑顔はいつも華やかで、つい目を細めてしまう。
スネークがこの世を去ってから僕はサニーから「父さん」と呼ばれるようになった。
呼び名を変えたところで僕たちの関係は何ら変わる事はなかったけれど、形式だけでも家族になったふりをしてスネークのいなくなってしまった世界の埋め合わせをしたかった。そしてその目論見はまずまず成功していた。
「ボーイフレンドに会いに行く娘をつけまわすほど、僕は野暮じゃないつもりだよ」
サニーが度々ハワイに行くのは、そこで働いているあの子に会いにいく為だ。僕はもう知っている。
「海で泳いだり、スパでくつろぐのも楽しいのに」
大学に通いながら特許で収入を得ているサニーは時間を見つけてはオアフ島にある有名なホテルに泊まっている。確かに興味はあるが、娘のボーイフレンドに会うのはやはりまだ気が引けるものがある。
「そうか、もう来週か……」
サイドボードに置いていたカレンダーを見ながら呟くと、サニーが駆け寄って僕の隣りに座った。勢いをつけて座ったのでソファーのスプリングが軽く軋む。
「寂しい?」
覗き込んでそう訊いてくる顔はどこか楽しげだ。
「ホテルの近くに綺麗なレイの作り方を教えてくれるお店があるの。父さんに似合うの、作ってあげる」
だから一緒に行こうと無邪気に誘うサニーは可愛い。僕はとうとう根負けした。
「真っ当な旅行の準備なんて、今までした事ないんだ」
文字通り世界中を飛び回った事はあるけれど、あれは旅行とは似ても似つかないものだったから。サニーは笑って僕に抱き付いた。
「じゃあ早くやらなきゃね」
僕の頬に軽くキスしてソファーから離れ、クローゼットのある二階に駆け上がって行った。今頃は中身を掻き回して手頃なトランクがないか探しているだろう。
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