★MGS小説

□パラメディック
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合流したのは想像していたよりずっといい女だった。
「あなたがキャンベルさん?よろしくね」
赤い髪を揺らし、頬に小さいえくぼを浮かべて挨拶する。
女らしい華やかさはいまいち足りないが、すべすべしてそうなきれいな肌に整った顔立ち……野暮ったい野戦服はいただけないが戦場に舞い降りた天使、と表現しても差し支えないだろう。
「ああ……しかし驚いたな、こんな素敵な女性がスネークの主治医で、おまけに一流の医者だなんて」
無邪気で可愛い笑顔だが俺にとっては刺激的すぎた。にやつきそうになるのをこらえ、顎を撫でてごまかす。こんな事になるならむさ苦しい髭くらい暇をみつけて剃っておけば良かった。
「それを言うならあなたもね。一緒に行動している人にこんなハンサムな人がいるなんてスネークからは聞いてなかったもの」
思わず食いつきたくなるようなピンク色の唇も素敵だ。しかし目の前の美女に気を取られてばかりではまずい。これからあるかもしれないチャンスもモノにできず見送る事になるかもしれない。俺はトラックに乗り込んだ彼女に半島各地で失敬した医療キットや薬を見せた。
「縫合キットに注射器、麻酔薬、鎮痛剤に解熱剤、生理食塩水……これだけ揃っていればたいしたものよ」
段ボール箱の中身を手に取りながら確認し、満足そうに頷く。どうやらお気に召したようだ。
俺はトラック内のシートに腰掛け、タバコに火をつけ……ようとしたのだが、目の前の天使の手にそれを阻止されてしまった。
「体に悪いわよ、そんなもの」
タバコの代わりにしろとバックパックの中の中から取り出したのは、キャンディーだった。タバコを吸うくらいなら飴でも舐めてろって事か。
俺は貰ったキャンディーを包みから取り出し、口に放り込んだ。可愛いピンク色のキャンディーはしっかり甘いシナモン味で、舌の上でゆっくり溶けてゆく。
……しかし、いい女だなあ。
腕や体つきを見る限りそれほど鍛えているようでもないし、衛生兵ってわけでもなさそうだ。どちらかというと研究室に籠っていたりするのが似合いそうな先生だ。
それがこんなやばい場所に来たって事は……やっぱりスネークとはいろいろな事情がある仲、なんだろうか。
ダンボールに詰め込んでいた中身の仕分けを手伝いながらそんな事を考えている俺に、彼女はとんでもない事を言い始めた。

「さてと、一通り終わったわね……じゃ、そろそろ服、脱いでもらえる?」
ぎょっとする台詞に思わず間抜けな笑みしか返せなかった。藪から棒に何言ってるんだ、この先生は。
「恥ずかしがる事ないわよ。白衣を着てないけれど私はれっきとした医者なのよ?……ああ、下もね」
何でこんなトラックの中で今さっき会ったばかりの先生にまっ裸に剥かれなきゃならないんだ。これはもしかして……誘われてるんだろうか。
医者だからって言いつつアレコレされちまうんだろうか。見た目清純そうな女性とはいえあのスネークの知り合いという事を考慮してみると……だんだんやりかねない気がしてくるから困る。
それに胸を張って自慢する事じゃないが、女性からこんなに大胆に誘われるなんて事、初めてなのでいまいち判断に苦しむ。
「いやいや、俺は大丈夫だ」
脚も折れてるのに何が大丈夫なんだか言っている俺自身も良く分からないが、とりあえずそんな言葉が口から出た。我ながら根性がない。
でもアレだ。この先生と好き勝手にアレコレして後でスネークと気まずい雰囲気になるのも得策じゃない気がする。ここは引いておくのが妥当な選択だろう。
要は安全な道を選んだだけだ!と、俺は自分に言い聞かせた。
だが、目の前の女はそんな俺の繊細かつ慎重な気持ちなどお構いなしのようだった。
「いいから、黙って言う通りになさい」
腰に手を当て、呆れた顔で俺を見る。
「まったく、いい歳してじれったいわね。早くしないと脱がせるわよ」
俺の煮え切らない態度に腹が立ったのか、ついにベルトに手がかかった。ここまでくると拒むのも逆に失礼な気がしてできない。ままよ!という気持ちで俺はそのまま彼女に任せた。
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