★MGS小説

□帰還報告
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戦争が終わり、私はいつも通りの生活を取り戻し始めていた。
友人や家族、恋人と過ごす穏やかな時間……とりたてて言う事もないような平和で退屈な日々に、私はこれ以上ない程満足していた。
そんなある日に、手紙が届いた。
飾り気のない白い封筒に書かれたリターンアドレスには、見慣れた名前がきれいな筆跡で記されていた。
呼び出された日時に基地の近所にあるいつもの店に足を運ぶと、窓際に彼女の姿が見えた。
青い目、緩くウエーブのかかった蜂蜜色の金髪に薄い小麦色の肌……印象的な美人の隣には、私の知らない男が座っていた。
「……帰ってたんだな」
「ありがとう、来てくれると思っていたわ」
手を軽く上げて挨拶した私に、彼女は映画女優顔負けの華やかな笑みで答えた。
昔はどちらかと言えば無愛想なくらいで、こんな笑顔を見せる女じゃなかった……面食らっている私に、彼女は席につくよう勧めた。
「あなたは初めて会うわね……ゼロ少尉よ。イギリスでは同期だったの」
彼女の説明を受けて納得したのか、隣の男は私の顔を見て目を細め、薄い唇の端を引き上げて人懐こそうな笑顔を見せた。
「同期とは……よろしくゼロ少尉、俺は彼女とは……」
「……知っています、コブラ部隊の方ですね?」
私の確認の言葉に、男は僅かに刮目して答えた。
白髪に近い色をしたプラチナブロンドに薄い灰色の目で冷たそうな印象のある男だが、意外と表情が豊かなようだ。私は言葉を続けた。
「私は陸軍で中尉の地位にあるので……あなたの資料も拝見した記憶があります」
ザ・ソロー……資料にはそう書いてあった。
シャーマンのような不思議な力を持ち、死者の魂をその体に乗り移らせたり、交信する事ができると……美形だがどこか浮き世離れした雰囲気があるのはその能力のせいなのかもしれない。
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