★MGS小説

□今はそばにいない君
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ウルフと初めて会ったのは、良く晴れた冬の日だった。
訓練の為にフォックスハウンドなんていう特殊部隊の人間が研究所に来ると訊いていたから見に行ったんだ。
今まで特殊部隊の人間なんて見たことすらなかったし、ただ興味があって。
わずか数人で構成された隠密部隊なんて、まるでコミックの中のキャラクターみたいでわくわくするじゃないか。
所長が案内しつつ歩いているのがまず見えて……彼女は他のフォックスハウンドの面々と一緒に施設を見て回っていた。
艶のあるきれいな金髪を後ろで纏めていつもみたいな野戦服じゃなく軍服に身を包んで、背筋をすっと伸ばして歩いていたのが印象的だった。
僕は戦車格納庫の二階からその様子を眺めていたけれど、一階にいる彼女が上を向いて目が合った。
僕はあまり目が良くないけれど、その時の彼女の青い目ははっきりと見えた。
すごく澄んでいて綺麗なのにどこか冷たい、そんな目だった。

「やあ……昨日はありがとう」
研究室で一人で残業していると彼女が来るようになったのは、二日前からだ。
昨日は食事を食いっぱぐれて腹を空かせてて、彼女が持っていたレーションを夜食に貰ったのでまずはそのお礼を言う。
「でもあれ、すごく個性的な味するよね。君たちはああいうの、いつも食べてるの?」
作業をしていた端末の画面にパスワードロックをかけ、椅子に腰掛けたまま隣に来たウルフを見上げて訊く。
さらりと肩から流れ落ちる金髪に青い瞳……今日も彼女は綺麗だ。

「気に入った?」
普段はあまり笑う事がないウルフだけど、わずかに唇の端を上げるようにして、笑って訊いてくる。

「いや、遠慮しておくよ。同じ甘い味付けなら、こっちの方がまだいいんじゃないかな」
僕は机の中にしまっていたチョコバーを彼女の手に渡した。
本当ならディナーでもご馳走したいところだけれど、この島には洒落たレストランなんて無いから仕方なく。
「……って、ちょ……待ってよ、ウルフ!」
チョコバーを机に置き、そのまま身を屈めてキスしてきたウルフから唇を離してなんとか訴える。
二日前からこんな調子だ。いきなりやってきてこれだから、いつも驚く。
最初の夜にはもしかしたらお互いに一目惚れだったのかななんて甘い想像もしてしまったが、たぶん違うだろう。
「いや、なのか?」
耳に唇を寄せて囁くように訊いてくる。
仕上げに耳を甘噛みされ、僕はいつものように逆らえなくなってしまった。
「いやじゃないけどさ……せめて部屋に行こうよ」
言いながらも性急なウルフの指先に甘い期待をしてしまう自分が恨めしい。彼女の指は僕のシャツのボタンを外し始めていた。
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