★MGS小説
□2週間
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リビングで葉巻を吸っていると、チャイムが鳴った。
時計を見ると19時を回ったところだった。
少し残業したんだろう。俺は玄関に行き、いつも通りドアを開けた。
「お帰り、今日は残業か?」
「ただいま!……そうなのよ、少佐に頼まれた事すっかり忘れてて!」
残業したのに疲れた様子はあまりない。
もっとも、パラメディックはいつもお喋りで元気なんだが。
俺たちの奇妙な同居生活が始まったのは、つい二日前の話だ。
今回の作戦のレポートを上げるという名目で自室に籠もりきりだった俺を心配して、家に来ないかと誘ってくれた。
もちろん、付き合ってもいない独身女性の家にやっかいになるなんてと最初は断ったが、彼女は意見を変えなかった。
疲れを癒すため、俺にはしばらく休息が必要……医者として彼女が下した判断だった。
期間は二週間。
場所は基地から少し離れた場所にある、パラメディックの家だ。
一人で暮らしているし、使っていない部屋もあるから気にしないでと、彼女は優しく微笑みながら誘ってくれた。
「あら、いい匂いね!」
キッチンから漂う香りに気付いたらしい。
「たいしたもんじゃないが夕食を作っておいたんだ。居候ならこれくらいしないとな?」
「ありがとう、スネーク」
パラメディックは俺の顔を見て笑った。
こんなとき決まって彼女は、母親が子供を誉める時みたいな優しい笑顔を見せる。
作戦が終わっても、俺たちはあの時の名でお互いを呼んでいた。
居候していれば当然彼女宛ての郵便も届くし、本当の名前はすぐに分かった。
彼女も俺のカルテから俺の名前を知っているはずだ。
バーチャスミッションとスネークイーター作戦……レポートを仕上げていないのもそうだが、まだあの出来事を完全には整理できていないと、彼女も分かっているんだろう。