★MGS小説

□ミルクの誘惑
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時計を見ると、いつの間にか午後3時を回っていた。
書類に走らせていたボールペンを置いて窓から外を見ると、ニューヨークの街には雪が降り始めていた。寒いはずだ。
僕は暖かいコーヒーでも飲もうと、キッチンへと向かった。

フィランソロピーの事務所であるこの部屋は、僕とスネークの住居も兼ねている。
普段は来客もあまりないけれど、今日は可愛いお客さんが来ていた。

海兵隊が新型メタルギアを作っているという情報を掴んだ僕とスネークは、数日後に新型メタルギアを乗せた偽装タンカーへの潜入を計画していたが、彼女にはそれに協力してもらう為にここに来てもらっていた。

「メイリン、コーヒーいれようと思うんだけど、きみも飲むかい?」
彼女がいるはずのリビングに入って声をかけたが、返事は無かった。
「メイリン? メイリ……」
ソファーを覗いて、すぐに理由は分かった。
彼女はソファーに横になり、クッションに頭を乗せて幸せそうな顔で寝ていた。
これがスネークの場合、僕がソファーに近づいただけで飛び起きるけれど、メイリンは深い眠りの中にあるようだ。
ブランケットに包まり、穏やかな寝息を立てている寝顔を見ていると、彼女の肌が白くてきれいであることに今更ながら気付いた。
東洋人独特の、ミルクみたいな優しい白い肌。
健康そうな艶やかな黒髪と長くて黒い睫毛も可愛い。

今なら触っても気付かないだろうか?
無防備な寝顔を見ているうちにミルク色の柔らかそうな頬に触れたくなり、僕はそっと彼女の肌に手を伸ばした。

そっと指の甲で触れてみると、そこは驚くほど柔らかかった。
少しひんやりとした肌はマシュマロよりも弾力があり滑らかで、さらさらと肌ざわりがいい。
あまりの気持ち良さに再び指が伸びたところで、黒い睫毛に縁取られた目が開いた。

「……おはよう」
「オタコン? 何やってるの?」
怪訝そうな顔で僕を見上げる。まだばれてはいないみたいだ。
僕は不埒な真似をしようとした事を誤魔化そうと話題を変えた。
「コーヒーいれようと思ってるんだけど、君も飲まないかい?」
メイリンはソファーに寝転んだまま両腕を上げて背伸びをして、僕の顔を見上げながら悪戯っぽく笑って言った。
「ありがと……できればカフェオレがいいなあ」
「了解、じゃあ少し待ってて……」
離れようとする僕の手を、小さな白い手が捉えた。
「ねぇ……触り心地良かった?」
僕の手の平を頬に当てながら、悪戯っぽい笑みを唇に浮かべて訊く。
僕は観念して、白状した。
「……そうだね、柔らかかったし、気持ち良かったよ」
メイリンは少し得意気な顔をして、僕の手を頬から首へと誘導していった。
「……もっと触ってみたい?」
滑らかな肌が指に触れる。
魅力的な誘惑に、心臓が高鳴り、僕は慌ててメイリンから離れた。
「無断で触った分、おいしいカフェオレいれないと許さないわよ?」
楽しそうに笑って言うメイリンに、僕は片手を上げて返事をし、キッチンへと向かった。

ふざけただけかもしれないし彼女の真意は分からなかったが、可愛い年下の女の子に翻弄されるっていうのも、たまにはいいかもしれない。
ぼんやりとそんな事を考えながら、僕はコーヒーを入れたフィルターに湯を注いだ。

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