★MGS小説

□医者と患者
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任務遂行中に撃たれた兵士の手術を終えてキャンベルさんと合流したのは、日が暮れてからだった。
『先生、悪いがそこで待っててくれ……少し遅れそうだ』
彼に指示された通り倉庫の影で待っていると、見慣れたトラックが通りかかった。
私は停まったトラックの運転席の人物をスコープで確認し、急いで飛び乗った。いつもは数人で移動しているのに、珍しく彼以外誰も乗っていない。
「待たせてすまなかったな先生、あんな場所で一人じゃ心細かっただろ?」
荷台に飛び乗った私に、運転席に座ったまま片手を上げて挨拶する。大怪我をしているのに大したものね。スネークが捕らえられたという報せを受けてから数日ぶりに会ったけれど、意外と声は元気そうだった。
「あいつの怪我、どうだった?」
隊員の怪我が心配なのか、運転をしながら聞いてくる。
「大丈夫よ、手術はしたけれど出血も思ったよりひどくはなかったわ」
彼に見えないよう運転席の真後ろに座ってバックパックの中から新しいシャツを取り出した。汚れてしまったシャツを脱いで新しいものを身に着けると、血と薬品の匂いが消えて少し気分がましになった。
「スネークについての情報は?」
「悪いな。諜報部隊のメンバーが頑張ってくれてるが、まだいい報せは入ってきていない」
着替えを終えて彼の手元を覗き見ると、走り書きされたレポートの束があった。隊員から無線で聞いた内容をメモに取って分析しているようだった。
彼と一緒に行動するようになって知った事実がある。キャンベルさんはこう見えて人一倍働く人だって事。
諜報部隊の隊員から送られてくる情報を元に戦力分布図を含む半島内の詳細な地図を作ったり、各隊員のフォロー、捕虜の説得にもあたっている。
それに加えてスネークを中心とした潜入部隊のサポートもほぼ一人でこなしているのに文句ひとつ言わない。
たまに本気か冗談か分からないような口説き文句も言ったりするけれど、気付けばスネークも私たちもすっかり彼を頼ってしまっている。
念の為にと思って事前に目を通しておいた彼の個人データに、間違いはなかった。
実直で勤勉なグリーンベレー隊員。コミュニケーション能力が非常に高く、部下にも信頼されている。ただしやや神経質で慎重すぎる一面がある……というのが上官によって書かれていた所見だった。
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