狂犬と化け猫

□2。ヒットマン
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真島は自分の事務所のソファに寝転がり、女からもらったものを眺めていた。それは黒塗りの小さなマッチ箱で、表には何やら難しい漢字が書かれていた。女と出会ってから数日過ぎており、その間に真島は色々な人間に漢字の読み方を聞いて回った。しかし誰もわからない。分かったのは最初の一文字だけである。自分の組の者や、自分よりは比較的物を知っているであろう嶋野にも聞いてみたが分からなかった。

「気になるなぁ…」

先日の女とやり取りを思い出して真島はニヤニヤと笑う。彼女は自分と同類だ。今まで色んな人間とやり合ってきたが、ああいうタイプは初めてだった。あの、背筋を這い回る感覚を思い出して真島はその薄い唇を舐める。そして去り際に見せた蠱惑的な笑みが頭の中によぎる。

「あかん!じっとしてるんは性分に合わん。嬢ちゃん、探し
にいこ」

いても立ってもいられなくなった真島はマッチをジャケットにしまうと勢いよく立ち上がった。
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