鴉達の輪舞曲
□第二章―――『力量・疑問』
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1―――『再開---Hellhound』
「んっ…あぁあ〜…」
思いきり伸びをしながら、今までの事を考える。
あれから…、彼が目覚めてから5日が過ぎた。
あの後、検査入院でさらに3日間入院し、結果は問題無し。
その後ARKに行き、手続きを済ませ、ARKが手配した新しい部屋を貰った。
そこは寮のようになっていて、新人のレイヴンが一時的に住むような場所である。結構な広さがあり、彼が今まで住んでいた所とはかなりの差があった。
レイヴンとしての名前は、本名と同じ『文月 閃』で登録した。
「(元から本名っぽくない名前だから別に問題は無いだろう)」
というのが専らの理由だったが、実際に名前により場所を割り出され、命を狙われたとしても、最低でも迎撃はできる。
閃にはそれほどの自信があった。
今まで住んでいた部屋から離れ、2日がかりで荷物を整理して新しい部屋に移動した。
そして、疲労から来る睡魔に身を任せ、そのまま朝まで眠り続けていた。
「(時計は…朝10時?結構寝たな…。一応周りの部屋には挨拶すべきなのか…?」
PCを立ち上げ、依頼が無い事を確認しながら閃はそんな事を思う。
「(まぁ、職業柄そんな事はしなくていいだろうか。
…いぃや、めんどいし)」
その後冷蔵庫の中身を見、何もないことを確認。
閃は昨日の内になんの準備もしなかったことを悔やみながら服を着替え、買い物に行く準備を済ませた。
「(さて、んじゃいくか)」
扉を開けて外にでる…と同時に鈍い音がした。
どうやらタイミング悪く、開けた扉の向こうに誰かいたらしい。
「んぁ?あぁ…、すんませ…ん?」
見ると、相手は僅かに緑がかった黒のロングコートを羽織り、顔面を押さえながらしゃがみこんでいる。
「ってうぉ!?すんません大丈夫ですか!?」
「あ…ぁ大丈夫だ。よくあることだから気にしなくていいぞ、と」
片手で顔を押さえながら立ち上がったその男を見て、閃がまず感じたことは、
「(…でかぃな;)」
軽く見積もって、190位はあるだろう。
年齢は恐らく20代前半。
髪はやや長め、色は基本は白髪だが、毛先は黒く染めている。