鴉達の輪舞曲

□第一章―――『前奏曲・慟哭』
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1―――「出逢い---『Meeting of fate』」

RAVEN'S ARKの一室。
普段はあまり使われることの無い一室が、今は無数の人で賑わっていた。
今日はARK公認のレイヴンになるための最終試験当日。
だがまだ開始には時間があり、室内にはリラックスしたムードが漂っている。
さながら小さなパーティーのようで、中には会話を楽しむ者もいれば、イメージトレーニングを重ねているような者の姿もあった。
そんな中、落ち着かない様子であたりを見回す者がいた。
彼の名は、『文月 閃』。
この物語の主人公である。

彼の見た目は少年と呼ぶべきか青年と呼ぶべきか判断に迷う容姿をしているが、実際の年齢は19。
既に青年である。

閃は、周囲の様子にたまらなくなり、一番近くにいた自分と同じ年頃の青年に声をかけた。

「なぁ、お前もレイヴン採用試験、参加するんだろ?」

話し掛けられた側の青年は少し驚いた様子を見せるが、閃と同じくこの雰囲気に戸惑っていたのか話に乗ってくる。

「あ、いや、俺は…」

何かを否定しようとする青年を無視し、閃は構わず話を進めはじめた。

「やっぱりなるならレイヴンだよなぁ〜!!オペレーターとかただの兵士とかになったって、やっぱりレイヴンみたいに活躍したり、闘う事は無いもんなぁ!!」
「いや、ちょっ…!!おい、人の話を…!!」
「レイヴンになって依頼受けて…。時には敵ACと出くわしてピンチ!!になって、そこからいろいろ…」
「…っておい!!いい加減にしろ!!」

そこで閃はようやく気付いた。彼が一方的に話していた相手の額に、少なからず『怒りマーク』が浮かんでいる事に。

「…あれ?なんか俺、気に障る事言った?」
「言った!!俺はレイヴン志望じゃなくてな、『オペレーター』志望なんだよッ!!!」
「…へ?何でオペレーター志望の奴がここに?」
「聞いてねぇのか?今日はレイヴン試験とオペレーター試験、両方の最終試験を『同じ時間帯』に『同じ会場』でやるんだ!!」
「って事は、まさか…?」

閃は恐る恐る周りを振り返る。
さっきまでフレンドリーな雰囲気を出していた会場内が、一転して重い雰囲気となってしまっていた。
他のオペレーター志望の者はもちろん、イメトレに集中していた人や会話を楽しんでいた者までが、閃に対し冷たい眼差しを向けている。
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