夢小説
□無題(弘樹目線)
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灯りがついている。
俺は大急ぎで家に帰ると、野分が夕飯を作っていた。
「ただいま」
「お帰りなさい」
1週間ぶりのちゃんとした挨拶に、それだけで俺は嬉しくて、顔がにやけてしまう。
「今出来たところです。一緒に食べられますね」
「ああ…」
「…その前に、ちょっとだけ」
そう言って、野分が素早く俺の唇を奪う。
「このくらいは、いいですよね」
「……事後承諾かよ」
そんなやりとりにも、少し慣れてきた今日この頃。
野分は俺が照れているのを分かっているから、楽しそうにしていて…ムカつくっ。
俺がそっぽをむくと、野分の腕が延びてきて包みこまれた。
「そんな顔も…可愛いです。…ね、ヒロさん…いいでしょう?」
俺を抱き締める腕に力が入り、逃げられそうにない。いや、逃げる気など毛頭無い。なんせ1週間、ちゃんと会ってないんだから。気持ちも身体も限界に決まってる。
野分の片足が俺の足の間に割って入り、押し付けてくる。
そんな風にされたら、どうしていいか分からない。
野分は、俺が困っているのを見て喜ぶ嫌なヤツなんだ…ホントにムカつくっ。
誘われるままにベッドに入り込むと、手早く脱がされ、野分の暖かいそれが当たり、期待で身体が熱くなる。
濃厚なキスに我を忘れ、自分に正直になっていく。
野分の握る手の強弱を敏感に感じ、俺は…もう…堕ちてしまいそうだ…。
「逝かせてあげますよ」
耳元で囁かれ、野分の熱を持った呼吸までもが、達する手助けになってしまった…。
「その顔は…俺だけのものですからね」
他のヤツに見せる気なんかないさ、野分がずっと傍にいてくれれば…。
言おうとしたが、言葉になる前に嬌声になってしまう。野分の手が更に伸び、俺をまさぐってくるからだ。
「は…あっ…っ…あぁ…ん…」
野分の長い指が、俺の感じる箇所に入り込んでくる。
早く…欲しい。
一つになりたい…。
「野分っ…もう……」
つい言葉が出てしまう。
「まだ濡れてませんよ」
野分が、にこりと笑う。
「いいったらいいんだよっ」
お前にすっかり慣らされてしまったせいだ。
苦しくて、息が出来なくて、でも暖かくて、幸せで。
お前に会う前は独りで生きていくつもりだったんだ。もうあの頃に戻れない。
責任とって…俺の傍に一生いろよ…!
そんなことを考えながら、でもやはり言葉にするのは恥ずかしくて、喘ぎ声を堪えるのが精一杯だった…。