夢小説

□図書館
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世間ではゴールデンウィークだが、俺は夜勤後の残業を終え、その足でヒロさんの職場、三橋大学にやってきた。
ヒロさんの予定だと、大学の図書館が休館中なので、資料の整理をしているはずだ。

閑散とした構内に入り、図書館を立看板で確認する。
本当に誰もいない。

俺はヒロさんにメールする。
『図書館の入り口にいます』

バタバタと足音がして、慌てた様子でヒロさんが迎えに来てくれた。

俺は笑顔で言う。
「手伝いに来ました!」


俺がここに入るのは、あれ以来だ。ヒロさんが、俺の事を「好きだ」と言ってくれたこの場所に足を踏み入れる。
ひんやりした空気。
独特な匂い。

あの時は夜だったし、夢中で追いかけていたから…どの棚の前だっただろう?
「…何考えてんだよ」
ヒロさんが赤くなってる。やっぱり思い出して恥ずかしいんだろうな。
「本当に誰もいないんですね」
俺はヒロさんに近寄るが、まだ触らない。万が一の事があるから。
「あの、今日は宮城教授は?」
「ああ、もともと休みで、今日はマジで俺だけ。ここの鍵を預かってる位だし」
「じゃあ、手伝いますね」
「お前、疲れてるんだろ、休んでろよ」
「早く終わらせて、ヒロさんを補給したいです」
「…………俺だって…」

ヒロさんの小さな声を、俺が聞き逃すはずがない。
誰もいないんだし。
俺は我慢出来ずにヒロさんを掴まえる。
「ちょっ!ここは俺の職場だぞっ!」
「ええ、分かってます」
重々承知でやっている。
そして無理矢理キスをした。
抵抗するヒロさんだが、本気で嫌がっていないのが分かるから調子づいてしまう。
キスだけで止めるつもりだったのに、明るい陽射しの中で誘うヒロさんが悪い。
「んっ…んんっ」
何か言いたげなヒロさんに気がつき、唇を離すと、「カーテン閉めさせろ!」と言って窓に手を伸ばす。
(嫌じゃないんですね、ヒロさん!)
嬉しくて、窓際に立つヒロさんを、背中から抱きしめる。
「こらっ」と言うヒロさんが照れている。期待に顔を赤く染めている。
ホントに可愛い……!
その時、新緑の香りと共にカーテンが大きく揺らいだので、俺は強くカーテンを引いた。この愛しい人を、誰にも見られないように……。
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