夢小説

□エプロン
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「な、な、なんだよ、ソレッ!!」

俺が帰ると、野分が洗濯物を畳んでくれているところだったが………

ピラッとした、白いものは一体?

「お帰りなさい、ヒロさん!……あ、これ、先日の送別会で使ったのを、どうぞって言われたんで貰ってきちゃいました。」

それは、真っ白な、胸当ての付いてる膝丈の、いわゆるメイド服でよく見るフリフリエプロンだった。

「貰ってきちゃいました、じゃねーよ!何に使うんだよ、それっ」

「あの…、ヒロさんに使ってもらえたらなぁーと思って。……ダメですか?やっぱり」

「あったり前だろっ!!」

まったく、今回はホントのホントに呆れた!俺は男なんだってーの!

「……あの、2枚あるんで、2人で一緒に付けるのはどうですか?」
「却下!」

速攻で断った。

ちらりと野分を見ると、また犬みてーになってる。垂れた耳が見えるんだよ、俺には。
……ま、そりゃあ俺だって、同居したての頃に考えない訳じゃなかったんだ。小説やドラマでありがちなんだよ。新婚家庭でさ……、奥さんがフリフリエプロン付けて夕飯作って待ってるんだよな。やっぱその場合、エプロンは白がいいよな……って、そこは拘るトコじゃねーぞ?

「わかったよっ。服が汚れねーし、捨てるのも勿体ないから使ってやる!……おまえの言う通りにしてやるよ」

「えっ、それって……」
犬の耳がピンっと立った。

「絶対一緒だからな!笑うなよな!」

「笑うはず、ありません!…きっとヒロさんが更に可憐に見えます!!」

野分が嬉しそうな声をして、後ろから抱きついてきた。きっと破顔してるんだろう。
……しかし、可憐って……いいのか俺?
……でもこんなに喜ぶなら、早速今晩のメシで…いやいや、それでは俺が乗り気みたいじゃねーか!

29歳の葛藤は、まだまだ続く……。
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