夢小説
□台風
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俺がソファーで本を読んでいると、背中に気配を感じ、手が伸びてくる。
…野分だ。
いつものことだから、かまわずにおく。
だって、この本、すごく面白いし。ちょっとくらい待ってろってんだ。
読み返してる本なら…まぁ閉じて振り返ってもやらないこともないが。
「ヒロさん…俺、すごく疲れてて…ちょっと寝たいんです。」
はぁ?じゃあ、とっとと寝ればいいだろ?
俺が無言でいると、
「でも…今夜は風が強くて…。側に…いてくれませんか…?」
その言葉を聞いて、俺はすぐに本を置く。
「…ちょっとだけだぞ」
「はいっ」
……案の定、ベッドに入った途端にコテッじゃねーか。
でも、台風みたいな夜にだけ、野分は甘えてくる。
野分の弱い部分。
多分無自覚。
この時だけは、口はどうにもならないが、
態度だけは素直にして、こいつを甘やかせてあげたい。
俺がいるだけで、こんなに安心してくれる。
こいつの側にいるだけで、温かい気持ちになるのは何故だろう。
で、結局、離れがたくて一緒に寝ちゃうんだよな!
いつ呼び出しがくるか分からないんだしさ…。
こいつの体温を感じながら、やっぱり今日も寝てしまおう。
俺だって、こいつの可愛い寝顔のおかげで、
いい夢が見られるに決まっているんだから…。