Mizukawa's text

□ブラックアウトした世界
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※死ネタにつき閲覧注意。





ふと、僕は目を覚ました。随分と長い時間、眠っていたようだ。


――僕は……?


どこからか、記憶が途切れていた。思い出そうとすると、頭の中が真っ白になってしまう。
不意に、しゃくり上げたような声が聞こえた。そちらに目をやると、君が、泣いていた。


――……どうしたんですか?


そう尋ねてみたけれど、君は泣き続けている。


――君に、涙は似合いません。何時ものように、笑ってください。


僕の名前を呼んで、微笑んでください。


やっぱり、君は泣いている。白くて華奢な手で目元を隠してはいるけれど、隠し切れていない頬を、涙が伝っていく。そして、滴り落ちる。一滴、二滴。


――どうして、泣いているのですか? ……何がそんなに悲しいのですか?


返事は、ない。彼の微かな嗚咽に、胸が詰まりそうになる。
何が、君をそれほどまでに悲しませているのでしょうか。綱吉くんを泣かせる輩は、この僕が許しません。

ゆっくりと、彼が唇を動かした。途切れ途切れに、紡がれていく名前。


「……む、くろ……」


君は、僕の名前を呼んだ。

あぁ、そんなに悲痛な声で僕の名前を呼ばないでください。呼んでくれるのならば、優しくて、柔らかい、あの声音で……。

そっと手を伸ばした。君の頬を流れていく涙を、拭う。……否、拭おうとした。

僕の指は、君をすり抜けた。



――……あぁ。


一瞬にして、僕の世界から一切の光が消え失せた。
その涙を、僕が止めてあげたかったのに。それさえも叶わないのでしょうか。

僕はそっと、目を閉じた。瞼の裏に、君の明るい笑顔が浮かぶ。


――もう、タイムリミットですか。


やはりこの世に、神なんていませんね。いるとしたら、人間たちの不幸を見て笑っているような外道ばかりでしょう。


――……さて。


これで、本当にお別れなのですね。では、最期に……これだけは願わせてください。

早く、君に笑顔が戻りますように。
もう君の隣にいてあげられない、僕が言えるようなことではないかもしれませんが。

非道な神も、これくらいは許してくれるのではないですか?

御免なさい。
そしてさようなら、愛しいひと。
















ブラックアウトした世界




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