※死ネタにつき閲覧注意。
ふと、僕は目を覚ました。随分と長い時間、眠っていたようだ。
――僕は……?
どこからか、記憶が途切れていた。思い出そうとすると、頭の中が真っ白になってしまう。 不意に、しゃくり上げたような声が聞こえた。そちらに目をやると、君が、泣いていた。
――……どうしたんですか?
そう尋ねてみたけれど、君は泣き続けている。
――君に、涙は似合いません。何時ものように、笑ってください。
僕の名前を呼んで、微笑んでください。
やっぱり、君は泣いている。白くて華奢な手で目元を隠してはいるけれど、隠し切れていない頬を、涙が伝っていく。そして、滴り落ちる。一滴、二滴。
――どうして、泣いているのですか? ……何がそんなに悲しいのですか?
返事は、ない。彼の微かな嗚咽に、胸が詰まりそうになる。 何が、君をそれほどまでに悲しませているのでしょうか。綱吉くんを泣かせる輩は、この僕が許しません。
ゆっくりと、彼が唇を動かした。途切れ途切れに、紡がれていく名前。
「……む、くろ……」
君は、僕の名前を呼んだ。
あぁ、そんなに悲痛な声で僕の名前を呼ばないでください。呼んでくれるのならば、優しくて、柔らかい、あの声音で……。
そっと手を伸ばした。君の頬を流れていく涙を、拭う。……否、拭おうとした。
僕の指は、君をすり抜けた。
――……あぁ。
一瞬にして、僕の世界から一切の光が消え失せた。 その涙を、僕が止めてあげたかったのに。それさえも叶わないのでしょうか。
僕はそっと、目を閉じた。瞼の裏に、君の明るい笑顔が浮かぶ。
――もう、タイムリミットですか。
やはりこの世に、神なんていませんね。いるとしたら、人間たちの不幸を見て笑っているような外道ばかりでしょう。
――……さて。
これで、本当にお別れなのですね。では、最期に……これだけは願わせてください。
早く、君に笑顔が戻りますように。 もう君の隣にいてあげられない、僕が言えるようなことではないかもしれませんが。
非道な神も、これくらいは許してくれるのではないですか?
御免なさい。 そしてさようなら、愛しいひと。
ブラックアウトした世界
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