捧げ物

□旧拍手集
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平安の都。

今、この都の平和は数十年前の一人の少女の犠牲のおかげであることを知っているのは阿部晴明とその配下の十に神将のみだった。



彼女は大きな力を持っていた。

そして、陰陽寮唯一の女性で自分の友だった。

彼女がさらわれるとは思っていなかった。

彼女は強かったから。

自分を越えるほど。

だから、油断していた。

彼女をさらった妖は寂しかっただけだった。

彼女をたった一人の友として欲した。

自分たちは妖に都を助けたくば彼女を今は連れ戻すな、と言われた。

今は彼女のためにも都のためにも妖の言うことを聞こうと思った。

でも、それは間違いだったんだ…。

彼女はそれと同時に妖と取引をしていたから。

自分が絶対助けに来てくれると彼女は信じてた。

だから、妖は言った。


「信じてるのか」

「ええ」

「裏切られるぞ。」

「そんなことない」

「じゃあ、もし裏切られたら」

―私と血の契約を交わせ―

「いいわ。そしたらお前と……」


自分たちの選択は彼女を裏切ることになったのだ。

だから、彼女は……


―血の契約って?―

―相手と魂の一部をつなぐことで永遠のつながりを約束することだよ―

―魂の一部って!―

―片方に何かあればそこを通じてもう片方にも影響がでる―

―片方が死んだらもう片方も…―

―死んでしまう可能性は十分にある―


決して血の契約の意味を知らないわけではないはずなのに。

そこまで信頼してくれてたのに、自分は……!




 
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