めいん  

□それでもいい
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「はあ…」

アキは、本を見ながら溜め息をついた。
「料理ぐらい、ディウ゛ァインに教わっておけばよかったなあ…」

まさかこんな年で人に…遊星に、手料理を作ってあげるだなんて思ってなかった 。他の家事はなんとか出来るようにはなってきたけど、…料理だけはどうしても駄目だった。

アキは再び大きな溜め息をついた。

「私、料理ぐらいも出来ないのね…呆れてしまうわ」

アキは、今まで料理は習ったことがなく、ましてや一人で作ったことなどなかったのだから、それは出来ないでも当然だった。しかし、ついつい自虐的になってしまう。     
「…遊星、なんて言うかな」

そんなことを呟いてみる。遊星に何を言われても、出来るようななるわけではないけど…。

「アキ…。どうしたんだ」
「遊星…!」

気付かなかった。遊星が、そこに立っていた。

「一体どうしたんだ?溜め息なんかついて…」

そう言ってテーブルの上にある本に手をのばす。

「…っ!だ、駄目よ!それは…、」
「料理の本か…」

ああ、見られてしまった。恥ずかしい。そして、情けない…。

「…遊星に手料理を作ってあげたことがなかったから…」
「アキ…。」
「それでっ…、遊星に嫌われるのがやで…っ。うぅっ…作ってあげようと…したけど、やっぱり…っ、出来る気がしなくって…」

アキは耐えきれずに泣きだしてしまった。遊星は、そんなアキに優しく話しかける。

「アキ…、聞いてくれ」
「……っ。」
「俺は、料理が出来る出来ないは気にしていない。別に食べたくないわけではないが、俺はアキがいるだけで嬉しいんだ。料理なんか、少しずつ覚えていけばいいじゃないか。そしていつでもいい。俺に…、美味い料理を食べさせてくれ。」
「…遊星…。」
「今はそれでもいいんだ。気にすることなど、全くない。」
「…遊星。ありがとう…私、頑張ってみるわ」
「アキ…。無理、するなよ」

…そうよね。急いだって、しょうがないじゃない。ようし、やる気が出てきたわ。

これから、頑張ってみせるんだからっ。

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