初恋迷宮

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『一緒にイタリアに帰ろう』




ディーノの言葉が、頭を木霊する。


分かってるんだ。姉貴が家を飛び出したのは、俺の為なんだって。

俺の夢はボンゴレの……沢田さんの為に働くこと。
その為にはあの家を出る訳にはいかない。

出たとしても、ボンゴレに関わって生きて行こうとすれば直ぐに親父に見つかる。



だから姉貴は、俺の代わりに家を飛び出したんだ。

姉貴が居なくなれば、ディーノの婚約者は必然的に俺になるから。


会ったこともない男と無理矢理結婚させられるより、ディーノと結婚する方が俺の幸せだと…姉貴は判断したんだろう。





ディーノと、結婚。


嫌な訳ではない。ディーノの事は好きだし、幸せになれる確信もある。

でも、ディーノに対する感情が恋愛感情ではないのは明らかだ。



それに、俺は…―――







その時、俺の頭に過ぎった二つの影。


骸と……そして、雲雀。





あれ?

なんで雲雀が出てくるんだろ…?

















「………でら、…獄寺!」

「ふぇ!?」



目を覚ますと、いつもの寮の部屋。

そして、雲雀の顔。




「いつまで寝てるつもり?いい加減起きないと遅刻するよ」

「え……あ、おはよ…」




今のは…夢だったんだろうか?

でもなんで最後に、雲雀の顔が浮かんだんだ…。
雲雀も……前にイタリアに帰ると言った時に引き止めてくれた一人だからだろうか?




「獄寺…?やっぱり様子が変だよ。昨日何があったの?」

「えっ………えーっと、悪いその話すんの、夜でいいか?」

「構わないけど…どうして?」

「沢田さんにも相談してから決断したくて……っても、覚悟はもう出来てんだけどな」



ディーノと一緒にイタリアに帰る……今の俺には、それしか選択肢はないから。




「……また、後ろ向きな考えしてないよね?」

「え…?」

「僕はまっすぐに前を見てる君が好きだ。後ろを向いたら許さないから」



それだけ告げて、雲雀は先に学校へと向かった。


好きって……友達として、って事だよな?
なんで俺、こんな顔が熱いんだ。




後ろ向きな俺…。確かに、前にイタリアに帰ると言った時は骸から目を逸らして、後ろばっかり見ていた。



でも、今は…。





夢の為に何かを諦める事は、逃げてる事になるのだろうか…――?



 
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