初恋迷宮
□婚約者
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「はぁ…」
ゴールデンウイークも終わり、また慌ただしい日常が始まった。
そんな時、無駄に元気だけが取り柄の山本が窓の外を見ながらため息をついた。
「どうしたの山本?悩み事?」
「どうせくだらない事ですよ、沢田さん」
「…なぁ、獄寺。隼奈って次はいつ日本に来るんだ?」
「は…?」
隼奈?
隼奈って誰だ?あ、骸の嘘で作り出された俺の双子の妹か。
「え……隼奈って、」
「ツナも知ってるだろ?獄寺の双子の妹」
「獄寺君の妹?………ああ、そういうことか」
沢田さんがジーッと俺を見つめる。
どうやら隼奈が女の恰好した俺の事だとは察してくれたらしい。
すみません、沢田さん。と目で合図を送った。
「で?その隼奈ちゃんがどうかしたの?」
「それが変なんだよな…隼奈に逢った日から寝ても覚めても隼奈の顔ばっかり浮かぶんだ。
なんか胸が苦しくなるし……俺、なんか病気かな?」
「え…」
それってもしかして恋患い?
名医でも治せないと言われる恋の病ってやつ?
そう思って綱吉は獄寺に目を向けると、獄寺も同じ結論にたどり着いたらしく、汗をダラダラと流していた。
なんか、凄く面倒な事になった。どうにかしてごまかさないと…。
「えっと…山本。隼奈ちゃんは忙しいから簡単には日本に来れないと思うよ」
「そっか……残念なのな、」
山本が獄寺君を好きになってしまうのでは?と思った事は何度もあったが、こんな事になるとは予想外だ。
しかし、獄寺君と同じ顔なのに一目惚れなんて考え難い。
恐らく頭では二人が別人だと思っているが、本能では隼奈が獄寺君だと気づいているのだろう。
でも、山本が獄寺君を好きになってただでさえややこしい人間関係を狂わせない為に、山本には存在しない隼奈へと想いを寄せて貰うしかない。
ごめん、山本。
そう心の中で親友に謝罪すると、クラス中がザワリとざわめき出した。
「見ろよあれ!リムジンだぜ!?」
1人のクラスメートが校庭を指差しながら騒ぎ立てる。
それに見習って俺も窓の外に目を向けると、見知った青年の姿に目を見開いた。
「ご、獄寺君!外見て外!」
「え…?」
それまで真っ青になっていた獄寺も、綱吉の言葉に反応して窓の外に目を向けた。
そして、ガタリと席を立ち上がり教室を飛び出した。
「っ……すみません沢田さん!ちょっと行ってきます!」
「あ、獄寺君…!」
「なんだ?あの人獄寺の知り合いか?」
「うん、ちょっとね。ごめん、山本。俺も行ってくるから先生に上手く言い訳しといて…!」
「あ、ああ…」
山本に見送られながら、綱吉も獄寺の後を追うように教室を飛び出した。