初恋迷宮

□スタートライン
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「おはよ、雲雀!随分早起きだな?いつもこんなに早いのか?」

「お、……はよ」



朝目が覚めると、いつもギリギリまで寝ている獄寺が僕より先に起きていた

あ……寝顔見られたかもしれない。なんて一瞬頭を過ぎったが、そんなことどうでもいい。

昨日はあれほど暗かったのに、今日はやたらと機嫌が良いみたいだ。


何があったんだ?




「君こそ。初めてじゃない?こんなに早く起きるの」

「なんか目が覚めちまってな。でも、早起きって清々しいな〜。散歩でも行くかな〜」

「……」



やっぱり変だ

いつもの獄寺じゃない



「何かあったの?」

「……」

「ねぇ、獄寺。黙ってたら分からないんだけど?」

「………雲雀、俺さ………此処、出てくな」

「っ!?」




てっきり六道と付き合う事になったとか、そんな事を言うのかと思っていた

そう言われるのを、覚悟していた




「何……言ってるの?」

「俺はさ、骸に逢いに日本に来たんだ。もう、目的は果たした。思い残すことはない」

「なに、それ?」



思い残すことはない?

なんなの、その人生を諦めたような言い方?


それに君の瞳はまだ、もっと此処に居たいって……言ってるじゃないか




「本当に…それでいいの?後悔しないって言うの?」

「っ……当たり前だろ!?元々俺が此処に居る理由なんてなかったんだ!
雲雀だって女の俺が居たら迷惑だろ!?」

「迷惑なんかじゃない!!!」

「っ………雲雀?」

「迷惑なんかじゃ、ないよ。僕は…君が……」



君が、好きだから。そう言えたら……どんなにいいだろか

でも、僕がそれを言ったら、余計に獄寺は此処に居られなくなる


余計に、獄寺が遠ざかる…





「君が……初めてなんだから。群れるのが嫌いな僕が、隣に居ても良いって……思えたのは」

「雲雀…」



これが、精一杯だった

溢れだしそうな想いを押し込めて、好きだと言う言葉をひた隠しにして…


それでも、君を手放したくないから




どうして君の瞳に写るのが僕じゃないんだ

僕が六道だったら、意地でもその手を離したりしないのに…――



 
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