初恋迷宮
□真実
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「骸様。今日中にこの資料に目を通しておいて下さい」
千種から差し出された資料を、骸は黙ったまま受け取った
「今日は……獄寺来てないんですね」
「まぁ、当然でしょう」
小さくため息をつく骸に、千種は意を決して口を開いた
「骸様…、獄寺には全て話してみてはいかがですか。その……骸様の父親の事も…」
「っ……話して、どうしろと?」
「獄寺なら、きっと全てを受け入れて…」
「余計な事は言わないで下さい!!!」
「っ…」
「僕の邪魔はするなと、言ったはずだ!隼人君が欲しいなら、今がチャンスですよ?傷ついてる隼人君を慰めたらいかがですか?」
「骸、様…」
もうこの話は終わりだと言わんばかりに、骸は千種から視線を外し、出ていくように促す
しかし、千種はその場に留まった
「確かに、俺は獄寺が好きです。女だということも、子供の頃から気付いてました」
「っ!?気付いて……たんですか?」
「気付きますよ。犬はニブイから気付いてないと思いますが、獄寺が骸様を見る目は……女の目でしたから」
俺は、その目に恋焦がれた
だから、獄寺に自分の気持ちを知って欲しいとも、好きになって欲しいとも思わない
俺が願うのはただ一つ
「俺は、獄寺にはずっと骸様を好きでいて欲しいです」
その瞳が、永遠に輝くことを…願う
「俺は獄寺が好きです。でも、それ以上に……貴方が大切です」
そう言って千種は、生徒会室を出ていった
それを見送った骸は、受け取った資料を机に投げた
「損な性格ですね……貴方は、」
そう呟くと、再び生徒会室の扉が開く
「千種?忘れ物ですか……っ!?」
扉の向こうにいたのは千種ではなく、暫く逢う事はないだろうと思っていた銀色
獄寺隼人が、真っ直ぐな瞳を僕に向けていた
ああ、貴女はどうして……その瞳で僕を捕らえて放さないのですか…――