初恋迷宮

□ファーストキス
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日本に来て数週間


慌ただしかった4月も終わりが見え始めた4月24日



2年A組の教室は朝からざわざわと騒がしかった





「なんか女子達が騒がしいっすね…」

「ああ、今日は山本の誕生日だから」

「野球馬鹿の?」



山本は沢田さんのルームメイトという事もあって、よく一緒に行動している

クラスの人気者で野球部のエース。爽やかスポーツ少年


これだけ聞いて不快に思う奴なんかいないだろうが、俺はちょっと苦手だった

というか、ちょっとした劣等感かも知れない


ああ、コイツは今まで大好きな事を好きなだけやって、自由に生きていたのか……そう思うとムカついたのだ

完全な八つ当たりだと自覚はしているが、俺がきつく当たってもヘラヘラ笑ってる様子を見てると、そのことを謝る事も出来ずにいる




「山本って……もしかしてモテるんですか?」

「モテるよ!今更気付いたの!?」

「はい…」



クラスの人気者って認識はあったが、単なるムードメーカーって思っていた

それに、ずっとイタリアで過ごしていたせいか日本人のカッコイイというのがイマイチわからない
特に俺の周りには美形のイタリア人が多かったから余計…



「山本は凄いモテるよ。運動神経なら並中で1番だし、性格も親しみ安いからね」

「はぁ」

「多分、並中の中なら3本の指に入るんじゃないかな?」

「あとの2人は?」

「骸と雲雀さん。骸は愛想がいいからね、ファンクラブもあるくらいだし。雲雀さんも表立ってキャーキャー騒がれる事はないけど、ひそかに想いを寄せてる人は沢山いるみたいだよ」

「雲雀も…」



骸がモテるのはなんとなく分かる

ラブレター貰ってる所見た事もあるし…


でも雲雀がモテるってピンとこない

今でこそ、少し愛想も見せるようになったが、初めて会った頃は酷かった

確かに顔は整ってるなぁとは思ったが





「男の俺から見ても山本はカッコイイと思うけど、獄寺君はそうは思わないの?」

「いや、格好悪いとは思いませんが………少なくとも俺の好みではないですかね」

「へぇ、獄寺君の好みってどんなの?」

「そーですねぇ……優しくて、爽やか」

「それなら山本も合格じゃない?」

「山本みたいのではなく、知的な爽やかさがいいんですよ!」

「知的…」

「で、紳士でリーダーシップがある人。背は高めの方がいいですかね…」

「ねぇ、獄寺君…それってさぁ…」




バサッ!


すると突然、俺と向かい合っていた沢田さんの机の上に資料のようなものが叩きつけられた

見上げると、何故か不機嫌そうな雲雀の姿




「ひ、雲雀さん!?」

「雲雀?なんだよ突然…」



突然の雲雀の登場に、さっきまで浮かれていた女子も教室の片隅によって震えていた


やっぱり雲雀がモテるなんて都市伝説だ




「これ、放課後までに六道に渡して」

「は?なんで俺が…」

「草壁が今日も居ないんだ。あいつの顔はしばらく見たくない」



どんだけ仲悪いんだ…そう思いながらも、どうせ昼休みには逢うのだからいいかと資料を受け取った



「じゃあ、よろしくね」



そう言って雲雀は、ニッコリと笑顔を向けた



「な、なんだよ雲雀…。笑顔が怖ぇーよ」



ピシッ、と空気が凍るような音がした

それと同時に雲雀から笑顔が消え、更に不機嫌そうに顔を歪めた




「悪かったね……爽やかな笑顔じゃなくて」



そう言って教室を出ていく雲雀の背中を見送りながら、俺は首を傾げた



「なんか今日は機嫌が悪いみたいっすね」

「そ、そうだね」



そんな獄寺の様子に、綱吉は小さくため息を吐いた



 
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