初恋迷宮

□自覚
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それはまるで、晴れ渡る空に浮かぶ雲のように穏やかな変化


でも、彼との出会いは確かに、僕の心に大きな革命を与えていた
















「獄寺、コーヒー」

「…俺、お前の小間使いじゃねぇんだけど?」



そう文句を言いながらも、獄寺はコーヒーを入れだす

そんな獄寺の行動に、僕の頬が自然と緩んだ


そして、そんな無意識な自分の行動にハッと我に反る



今日、僕に笑顔が増えたなどという戯れ事を草壁に言われた

笑うなんて行為、僕はしないし、必要もない


しかし、確かに今僕は笑っていた

その事実に、僕は戸惑いを隠せなかった




「どうした?」

「いや……別に、」



僕は動揺を隠す為に顔を背け、獄寺のいれたコーヒーを手に取った


安っぽい味がするが、やっぱり美味しい…





「君、金持ちのお坊ちゃんじゃなかったっけ?なんでこんなインスタントコーヒーなんかいれられるの?」

「あー、それはシャマル………って、家の主治医な。そいつがいつもインスタントコーヒーばっかり飲んでてな。ガキの頃にシャマルの飲むコーヒーに憧れて、よく真似して作ってたんだよ。苦くて飲めなかったけどな…」



そう懐かしそうに語る獄寺に、何故かイラつきを感じた



獄寺が六道の話をするとイライラするのは、六道が嫌いだから

沢田綱吉や山本武の話題にイライラするのは、群れているから



だが、今は何に対して苛立っているんだ?


会ったこともない相手に、しかも主治医というだけで群れてる訳じゃない

苛立つ理由なんかないはずなのに




「雲雀?お前やっぱり様子おかしくね?」

「…そんなことない」

「そんなことあるだろ?なに怒ってるんだよ」



なに怒ってる?

そんなの僕が1番知りたいよ



「おいっ!ひばっ…」

「うるさいっ!!!」



僕は、獄寺が差し延べた手を払い、振りほどいた



「っ…!」



イライラする

理由もわからないから、余計に



獄寺の側にいるのは心地良いと感じるのに、それに比例するように心がざわつく

こんなの、僕らしくない




「もう、いい…」

「雲雀…?」




知りたくない

知らなくていい


こんな自分は、僕には必要ない




「……もう、必要以上に僕に関わるな」



君と居ると、僕が僕でなくなる



「な、なんだよ!!お前がコーヒーいれろって言ったんだろ!?」

「もういらない。あんな安っぽいコーヒーなんか」

「っ……分かった。じゃあお前も俺に関わるな!!!」




そう言って、獄寺は僕に背を向けながらベットに入った



その様子に、何故か胸が痛んだが、僕はそれに気付かないふりをして机に向かった



疲れていたはずなのに、この日は眠る事が出来なかった



 
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