初恋迷宮

□友達
1ページ/4ページ





「…でら、獄寺、起きろ」



昨夜、獄寺に仕事を手伝って貰い眠りについたのは深夜2時過ぎだった


僕にとっては仕事も早く終わり、よく眠れた方なのだが、獄寺にしてみればかなりの夜更かしだったようで、なかなか目を覚まさない


僕のせいで深い眠りについているのだから悪いとは思うが、だからといって遅刻を許すわけにはいかない

呼び掛けるだけでは目を覚まさない獄寺に見兼ね、僕は眠る獄寺の肩に手を添えた



(細い…)



僕も草壁や六道なんかと比べると、認めたくはないが細い方だと思っていた

しかし、彼はその比じゃない



女、みたいだ




「獄寺、いい加減起きろ」




僕は頭に過ぎった疑問を振り払うように、彼の肩を揺さぶった

すると、獄寺が小さく目を開く



「ん………って、ひ、雲雀!?」



目が覚めていきなり僕の顔が目の前にあったせいか、獄寺が驚いて声を上げる

心なしか、頬が赤い気がする




「獄寺?顔、赤いけど風邪でもひいた?」



流石に自分のせいで風邪をひかすなんて後味が悪い

心配になって額に手をあてると、少し熱を持っていた



「少し熱いね」

「ね、寝起きだからだろ!大丈夫だっ!」

「ならいいけど。でもいいの?いつもの草食動物達と朝飯食べるんじゃないの?」

「え!?もうそんな時間なのか!?」



獄寺は慌てて起き上がると、着替えを持って洗面所に駆け込んだ





獄寺と共同生活をするようになって、一つだけ疑問に思っている事がある


獄寺は決して僕の前で着替えをしない




何か理由があるのだとすれば可能性があるのは二つ



一つは、虐待の痕を隠している

獄寺が企業の社長の子息であることは転校してくる前の資料で知っている


特殊な家庭で育ったのだから虐待の可能性がないとは言い切れない




二つ目は、多分こちらの方が可能性は高い

性行為の痕を隠している



獄寺が女からモテるのは一目瞭然だし、先程触れた時の細い身体

イタリア育ちだということも含めれば男から好意を抱かれていても不思議じゃない


しかも彼は、六道にかなりイレ込んでいる



もしかして既に六道の…





「雲雀ー?まだいるか?」



思考を巡らせていると、洗面所から獄寺が声をかけてきた



「…いるよ」

「お前、もう学校行くんだろ?起こしてくれてサンキューな」

「…別に、寝不足は僕のせいでしょ?」

「ははっ、そういやそうだったな〜」



不思議だ


昨日まではこんな会話は皆無だったというのに

どうしてこうも自然に会話が出来る?



こんな、まるで友人のような会話をするのは何年ぶりだろうか

もしかしたら、初めてかもしれない




「雲雀って、ちょっと不思議だな」

「え?」

「俺、すげぇ人見知り……つーか、人が信用出来ないつーか。骸とか沢田さんも初めてあった時はぎこちなくてさ…。
だから、こんなにあっさり馴染めたの、雲雀が初めて」



初めて…

獄寺にとっても初めて?



「奇遇だね、僕も初めてだ」

「なんだ、意外と気が合うんだな、俺ら」

「そうかもね、君が風紀を乱さなければ完璧なんだけど?」

「前言撤回。やっぱり雲雀とは反りが合わない」



どうやら、風紀を正す気はまるでないらしい


普段なら咬み殺してる所だけど、今日は何故か気分がいいから見逃すことにした



 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ