初恋迷宮

□縮まる距離
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「そしたらな、沢田さんが…」

「クフフ…すっかりこちらの生活にも慣れたみたいですね」



俺と骸が再会して早1週間が過ぎた

骸は生徒会の仕事とか忙しいらしく、昼休みの限られた時間にしか一緒に過ごすことは出来ない


だから俺は、沢田さん達と昼食を済ませてからはずっと生徒会室に入り浸っていた

骸もそんな俺をいつも笑顔で出迎えてくれる




「なぁ、骸…。今日も放課後は忙しいのか?」

「えぇ、仕事が山積みですので…」

「そっか…」



放課後なら時間気にせず骸の側にいられんのに…でも、忙しいんなら仕方ないよな!




「あ、そうです!寮に帰れば時間があるんですよ。隼人君の部屋に遊びに行ってもいいですか?」

「お、おぉ!…あ、でもダメかも……ルームメイトが…」



そう言って俺は、雲雀の事を思い出した



「え…隼人君、ルームメイトいたんですか?話題に出なかったのでてっきり一人部屋だと…」

「うん……雲雀、なんだけど」

「っ!?」



骸が驚いたように目を見開く

骸と雲雀は仲が悪いみたいだったから、雲雀の話題は避けていたのだが……やっぱりずっと隠してなんかいられないよな




「雲雀君がルームメイトの許可をするなんて…」

「…なんか、リボーンさんが条件付きで頼んだらしい」



ふと骸の顔を見上げると、いつもの優しい表情が消えていた



「む…くろ?」

「え?あぁ、すみません…」



あんな強張った骸の表情…初めて見た

そんなに雲雀が嫌いなのか?



「でも、大丈夫ですか?雲雀君って直ぐにトンファー出すでしょう、怪我とかないですか?」

「ああ、部屋では問題ねぇよ。つか、会話もまともにねぇし。まぁ、登校したら校則違反ってうるさいけど」



そう言って腕に付けているアクセサリーを骸に見せると、骸はいつものように優しく笑った

よかった、いつもの骸だ




「確かに校則違反ですけど、隼人君にはよく似合ってますからね」

「おいおい、生徒会長様がそれでいいのかよ?」

「クフフ。僕は生徒の味方ですから」

「なんだそれ、似合わねぇー」



まるで正義の味方だとでも言うような骸の言動に、俺は笑みを返した

そしてふと、あることを思い出す




「そういや骸って一人部屋なんだろ?俺が骸の部屋に行ったらダメか?」




俺がそう問うと、骸が目を見開いた

え…もしかして迷惑だったのか?




「わ、悪い…嫌なら構わねぇんだけど…」

「いえ!そんなことないんですよ!嬉しいです。ただ、ここ最近は忙しくてろくに掃除もしてないので…。流石にあの部屋に人を呼ぶのは……、掃除が出来たら改めて招待してもいいですか?」



ニッコリと笑って告げる骸に、俺は目を輝かせた



「おぉ!絶対だからな!約束!」



そう言って俺は指切りだと言わんばかりに小指を差し出すど、骸も戸惑いながらも小指を出した



「懐かしいですね…指切りげんまん」

「だろ?覚えてるか、嘘ついたら…」

「僕の頭のヘタをちょん切る、でしたよね?勘弁して下さい…」

「ヘタが無くなったら骸じゃないもんなー」

「ヘタじゃないです。個性的で良くないですか?」

「自分で言うな!」



そう言って俺達は目を合わせて笑いあった

昔と変わらない、俺と骸の関係


それが凄く、心地が良い…――






















昼休みの終わりをチャイムが鳴り響き、獄寺は教室へと戻っていった


残された骸は、指切りをした小指を静かに眺めていた





あれは、まだ隼人君が7歳の時…


隼人君の母親が病気で息を引き取って、泣きじゃくっていた隼人君と僕が交わした約束




僕は隼人君を泣かせたりしない

悲しませたりしない


ずっと変わらず…側にいる、と





「果たしてこの約束を、僕は守れているんでしょうかね?」




だって僕はあの時と、こんなにも変わってしまったのだから…――




 
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