夢想恋華

□エピローグ
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「恭さん、明日は日本政府との面会が…」

「全部キャンセルして」

「え…あ、はい!」




雲雀と獄寺が付き合い始めて、10年の月日が経った。

過去に白蘭との戦いで見た未来と同じように、雲雀は並盛で風紀財団を設立し、滅多に日本を離れる事はない。




「ちょっとイタリアに行ってくるから」




ただ一つ、例外を除いて。






*エピローグ
  例えばどんな未来でも*












既に通い慣れてしまった、イタリアボンゴレ本部。


雲雀は真っ直ぐにとある部屋に向かい、ノックもなしに扉を開いた。






「隼人、いるんでしょ?」

「……お前、ノックくらいしろっていつも言ってんだろ」




そこは、ボンゴレ嵐の守護者に与えられた私室。

資料が山積みになったデスクと、仮眠を取るためにあるベッドしかないシンプルな部屋に、獄寺は横になっていた。




「沢田から連絡貰ったよ。なんで僕に知らせてくれなかったの?」



雲雀はベッドに腰をかけ、そこで横になっている獄寺の髪に優しく触れた。



「…この程度の事でお前に頼ってたら、この先どうすんだよ?」



あの日から、獄寺の予知能力はどんどん力を増していた。

学生だった頃はほとんど悪夢を見る事はなかったが、沢田がボンゴレ10代目に就任し、本格的にマフィアとして活動するようになってからは、日に日に悪夢を見る頻度が上がっている。





「今回は、君の部下だってね」

「ああ。………守れたと、思ったんだ」




まるで涙を隠すかのように、獄寺の腕が目元を隠す。




「夢で予知して…だからアイツには任務に参加させなかった。確かに未来は変わったはずなのに…」



獄寺の部下は任務中に命を落とす未来だった。
だから獄寺はその部下を任務から外し、自宅待機を命じた。

しかし、民家にマフィアが乗り込んで来たとの情報を聞き、上司に似て無謀なのか勇敢なのか。単身乗り込み………そこで相打ちになり命を落とした。


確かに獄寺が予知した未来とは違う結末になった。
だが、結局その男の命は儚く散ってしまったのだ。



それが雲雀が綱吉から聞かされていた事実だ。




「未来を変えるのって、単純じゃないんだな…」

「………」




これまで獄寺は、何人もの部下を失っていた。
もちろん、獄寺の予知のおかげで救えた命の方が多い。


だが、獄寺にとって。救えた命よりも、救えなかった命の方が重くのしかかっている。




「君が悪い訳じゃない」

「……そんなの、分かってるけど」



理屈じゃないんだ、と獄寺は小さく呟いた。

目を伏せてはいるが、その瞳から涙が流れる事はない。
10年前のあの日から、獄寺は雲雀にすら涙を見せる事はなかった。


恐らく獄寺にとっては今も昔も、弱みを見せられるのはただ一人……という事なのだろう。


獄寺の気持ちを疑った事はないし、獄寺の心に今もなお鮮明に残る彼女に嫉妬の気持ちもない。



だが少し、やる瀬ない気持ちになる。



 
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